公道を走行するカート写真はイメージです Photo:PIXTA

アニメやゲームではおなじみの「バナナの皮を踏んで転ぶ」シーン。実は、バナナの皮は普通の床に比べて約6倍も滑りやすいことが、日本人研究者の実験で明らかになった。研究のきっかけは、人工関節の専門家が抱いた素朴な疑問。さらに、あの人気カートゲームを現実に再現したところ、驚きの結果が待っていた。バナナの皮は本当に人を転ばせるのか? イグノーベル賞を受賞した研究が、誰もが知る「お約束」の真実を明らかにする。※本稿は、サイエンスライターの五十嵐杏南『ヘンな科学 “イグノーベル賞”研究42講』(三笠書房)の一部を抜粋・編集したものです。

バナナの皮の「滑りやすさ」を
真剣に研究した日本人科学者

 バナナの皮を踏んづけて滑ったことがある人に聞きたい。どこに行っても小ぎれいな日本で、どこにバナナの皮なんて落ちているのだろうか?

「バナナの皮を踏むと滑る」という認識は、19世紀後半にバナナがアメリカに広まった時、外で食べては路上に皮をポイポイ捨てる人が増えたことで定着した。

 1879年にはアメリカの有名誌が「バナナの皮を歩道にポイ捨てする人のせいでたくさんの人が(転んで)骨折してしまい、迷惑極まりない」と物申したこともあるくらい。よほど街中がバナナの皮まみれだったのだろう。

 そんな大胆なポイ捨てもなかなか見かけなくなった今では、多くの人の場合、バナナの皮で滑るのは某ビデオゲームでカートに乗った時くらいではなかろうか。

 誰もが疑うことのないバナナの皮の威力。これを深掘りして、摩擦の大きさの指標である摩擦係数を算出した北里大学の馬渕清資名誉教授らに、2014年の物理学賞が贈られた。