完璧を求めすぎて仕事を終えられない。やらなければいけないことを先延ばししてしまう。そんなときの対処法を、『おい、とりあえず終わらせろ』の著者、nwiizo(ぬうぃぞう)氏が伝えます。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
中間管理職ほど抱え込みやすい
部下から上がってきた資料を開く。
完璧ではないが、あと少し自分が手直しすれば、上に出せる。
そう思ったところで、別の相談が入る。会議に呼ばれ、チャットに返信し、気づけば夕方になっている。
そのまま出せば、上司から指摘されるかもしれない。とはいえ、部下に差し戻して一から説明する時間もない。
「自分で直した方が早い」と引き取った仕事が、いつの間にか積み上がっていく。
上司にも部下にも、きちんと応えたいと思う忙しい中間管理職ほど、仕事を手元に抱え込みやすいのではないでしょうか。
ただ、その間にも、部下は次の指示を待っています。上司も、その資料をもとに判断する予定を立てているかもしれません。
自分では「少し整えているだけ」のつもりでも、周りから見れば「次に進めない時間」になっている。上司と部下の間に立つ人は、仕事の流れの真ん中にいるのです。
必要なのは、すべてを自分で仕上げることより、相手が次に動ける状態にして渡すことです。
「60点」は流れを止めない選択
そのために、「60点で出す」というのをすすめます。
「60点で出す」とは、雑にやることではありません。流れを止めない、という選択です。
ただし、60点の基準は自分だけで決めるものではありません。
相手との合意が前提です。必要な情報が揃っていなければ、早く渡しても相手は判断できないからです。
では、何があれば相手は次に進めるのか。一番手っ取り早いのは、直球で聞くことです。
私もかつて、資料のゴールがわからないまま、調べる範囲を広げ続けていたことがありました。そこで、上司にこう聞きました。
「この資料で、何を判断されますか?」
相手は少し考えて、こう答えました。
「来週の経営会議で、予算をつけるかどうか。最大の要因が何で、それに対して何ができそうか、の2点がわかればいい」
必要な情報は、たった2点でした。席に戻り、開いていた47個のタブを見ました。必要だったのは7個だけです。
何を判断するための資料か。それがわかれば、「もっと調べる」「もっと整える」のうち、今回はやらなくていいことも見えてきます。
自分が抱えた2日間、後輩の仕事も止まっていた
実際に、手元で仕事を止める影響を痛感した経験もあります。
ソフトウェア開発の現場で、私が「もう少し整えてから出そう」と抱えていた作業がありました。後輩も、その成果を前提に作業を進めていました。
私の作業が本流に取り込まれるまで、後輩は自分の変更を確定できません。
私が抱えていた2日間、後輩の作業は本流から離れていき、いざ統合しようとしたら、修正内容があちこちで食い違っていました。
私が「磨いていた」2日間、下流で待っている人の時間も止めていたのです。
それでも、早い段階で確認するのは怖いものです。私の場合は、「そんなこともわからないの?」と思われるのが怖かった。
でも、聞かずに抱え込み、ズレたまま進んでやり直す。そのために失った時間は、聞く恥ずかしさとは比べものになりませんでした。
聞き方は、大げさでなくていいのです。
チャットで「1点だけ確認させてください」と送る。定期の1on1で聞く。会議で「この資料のゴールを、改めて確認させてください」と投げかける。
まずは、手元で止まっている仕事1件について、相手が何を判断したいのかを確認してみる。
そのために必要な情報が揃っているなら、細部を磨き続ける前に、方向性を見てもらう。
そうすれば、流れを止めずに仕事が進むでしょう。
本書の内容
まえがき 完璧を目指して、今日も終わらなかった
「もう少し良くしてから」の罠
「60点で出す」という革命
私たちには「終わらせる技術」が必要だ
第1章 おい、部屋を掃除しろ ―― 「完了」の正体を知る
「擬似完了感」のループに陥ってはいけない
「部屋の掃除」は終わらせるための小さな練習 ―― 小さな完了は複利のように効く
「わかってから出す」は動かない言い訳
あなたの「まだ60点」は、相手の「もう十分」かもしれない
「真面目な完璧主義」は「怠惰な先延ばし癖」と同じ
「良い」の基準を自分の中だけにとどめるな
先延ばしは「明日の自分への丸投げ」で進行する
「今日こそ頑張ろう」を繰り返さないための5ステップ
第2章 おい、やることを絞れ ―― ステップ1「決めろ」
何も聞かないまま2週間過ごすな
スコープを絞れ
「良い感じ」は測れないから終了条件を言語化する
ゴールは近い未来に置く
60点とは妥協ではなく「何を捨てるかを選ぶ」こと ―― 優秀なエンジニアも「諦めること」を決めて動く
早く聞く人が一番偉い ―― 「この方向で合ってますか?」を最初の30分で聞く
「山の間で立ちすくむロバ」になるな ―― 「十分良い」を選ぶ
小さな決定を頭の外に出す
第3章 おい、完了を祝え ―― ステップ2「分けろ」
やるべきなのに手が動かないのは、タスクがでかすぎるから ―― 「根性」より「構造」を疑え
「ただ手を動かせば終わる作業」に悩まないために ―― 「わからなさ」には5つの層がある
「全部わからない」は、書き出す前の幻想
完了を祝え
自分の「動ける粒度」を知る
動いたから見えた問題は前進の証拠
第4章 おい、手を動かせ ―― ステップ3「始めろ」
完璧な準備は、永遠に来ない ―― 方向だけ確認してから走れ
やる気を待つな ―― でも、体調は本当に大事だ
「本来の自分」という幻想を捨てる ―― 言語化も60点でいい
無駄かどうかの「判断そのもの」を消す環境設計
「美しい暮らし」の話にしないこと
「馬鹿げた小ささ」が効く ―― 「毎日30分」が失敗を作る
完璧主義者こそ、AIに叩き台を作らせろ
思わず始めてしまう「トリガー」を設定せよ
「失敗しても致命傷にならない構造」を先に作る
通知を切れ、視野を狭めろ ―― 「どうせ何をやっても変わらない」という冷笑は完璧主義の変形
第5章 おい、60点で出せ ―― ステップ4「出せ」
成果物と人間の価値は別物 ―― 「もし後輩がこれを出してきたら?」と想像する
シンプルなものをシンプルなまま出せ ―― 「早く終わってしまった気まずさ」を超える
早めのフィードバックは自分の死角に気づかせてくれる ―― アウトプットの質を落とす記憶の書き換えに抗う
「評価されたい」と「60点で出す」は両立する
助けが必要な状態を、ひとりで抱え込まない ―― 「60点で出す」のを許されるための関係性の作り方
「後戻りできないポイント」を外さない ―― 完了が先、改善は後
第6章 おい、いいからやり直せ ―― ステップ5「回せ」
「未来に向けたアドバイス」を受け取れ ―― 相手を評価者モードから助言者モードに変える問い
場当たり的な改善は「言葉の裏」を読むことで防げる
フィードバックの価値は受け手の準備で半分決まる ―― 解決法ではなく問題を言語化する
1回のフィードバックから10回使える原則を抜き出せ ―― 「自分は成長している」という感覚に騙されない
優れたチームは「誰が悪かったか」を問わない ―― 感情の処理と構造の理解を分ける
100回夢見るより60点で3回出せ
小さな成功が「地味な確信」を育てる ―― 「高揚感のある自信」より「地味な確信」
失敗など構わない ―― 仮説があれば
あとがき ―― あなたが終わらせたものを、誰かが待っている
私のおすすめの本を紹介します ―― とりあえず終わらせるために効く本たち