2万人をみてきた組織開発コンサルタントで『組織の違和感』の著者である勅使川原真衣氏が、実際に職場に分け入って考えた、組織変革のコツを伝えます。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
「気が利く人」がいると、組織は回ってしまう
職場にいる、周囲の変化によく気づく人。
誰かが困っていれば先回りして助ける。備品がなければ補充する。新人が入ってきたら職場のルールを伝える。
そういう人がいると、組織はとても助かります。
ですが、だからこそ注意が必要だと思っています。
なぜなら、「気が利く人」が何とかしてくれる状態に、組織が慣れてしまうからです。
違和感は確実に蓄積する
本来なら、一人の人に負担が重くなる状況は、役割分担を見直したほうがいいサインです。
しかし、そんな小さな違和感があっても、気が利く人がそのたびに調整してくれると、表面上は問題なく回っているように見えてしまいます。
すると周囲は、「今のやり方で大丈夫なんだ」と思ってしまう。
でも、問題がなくなったわけではありません。
見えなくなっただけです。
その人の中には確実に、「また自分がやるのか」「なぜ誰も気づかないのか」という違和感が少しずつ蓄積していきます。
そして、ある日突然、優秀な人が辞める。
周囲は「そんなに不満があるようには見えなかった」と驚きます。
でも実際には、ずっとサインは出ていたのかもしれません。
気づかいに頼る組織では、新しいことも生まれにくい
さらに問題なのは、こうした組織では新しい挑戦も起きにくくなることです。
既存の仕事を回すために、気づく人が調整や穴埋めに追われる。
すると、本来なら改善案を考えたり、新しい事業に挑戦したりするための余白がなくなります。
組織全体も、「誰かが何とかしてくれる」ことに慣れ、自分で違和感を見つけて変える力を失っていきます。
気が利く人がいるのに、チームとしてはどんどん弱くなる。
そんなことが起こり得るのです。
違和感を個人に処理させない
組織で大切なのは、「気の利く人」が気づく度に毎回フォローすることではありません。
その人が気づいた違和感を、組織の課題として扱えることです。
なぜこの仕事はいつも宙に浮くのか。なぜ同じ人ばかりが調整役になるのか。
なぜ問題が起きるたびに、誰かの善意で埋めているのか。
そこを見直す必要があります。
気が利く人は、組織にとって大切な存在です。
だからこそ、その人の気づかいを「便利な仕組み」にしてはいけません。
誰かの善意がなくても回る状態をつくる。そして、気づいた違和感を次の改善や挑戦につなげる。
それができなければ、失うのは一人の優秀な人だけではありません。
組織そのものが、変化する力を失ってしまうでしょう。
忙しいリーダーに、効果のあることだけ

「好き嫌い」や「やる気」、
「あうんの呼吸」に頼らず
組織を機能させるための具体策!
対話より先に、やるべきことがある。
「大丈夫です」のひとことでモヤッとしたとき、
待ちの姿勢ばかりの部下に自走してもらうにはどうしたらいいのか、
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えるための効果的な伝え方は?……
ビジネスの現場に尽きないコミュニケーションの悩みを、「マネジメント」のスキルとして、「3段階」に分けて打ち手を授けるのが本書です。
まずは土台となる「観察」のスキルを紹介。ここでは、違和感に着目するというユニークな手法をとります。
そして、「自分を知る」「相手を知る」「組み合わせる」の3段階で、関係性から組織の最適解を導き出します。
自分と相手の「持ち味」を知り、
組織をつなぎ直すための一手を
この3段階を経て、違和感を乗り越えるための伝え方や振る舞い方を具体例とともに紹介します。
スキルといっても、難しいものではありません。「あれ、今なんか変だったな」という気づきを、手がかりにつかむこと。
さらに本書では、「持ち味」を知るためのいくつかの診断も掲載。すぐにチームに実装できるような作りにしています。
事前に特別な準備や学習はまったく不要。やるべきことが明確になり、現場のもやもやがクリアになります。
いつでも「今ここ」での気づきから組織を改善できる。行き詰まった状態を打開する新鮮な方策が詰まった、忙しいリーダーの支えになる一冊です。

本書の内容
はじめに
ギリギリな組織の頼みの綱は
人それぞれが「正しさ」を生きている
「持ち味」の組み合わせと「解釈」のクセ
第1章 違和感とは何か? ―― 「決めつけ」が横行する現場で
観察の達人!? コナンくん
仕事に本音はいらない
「なんか変な感じ……」の正体
人はみな「違う色のメガネ」をかけている
「職場のすれ違い」は決めつけから生まれる
とにかくみんな疲れている
すべてのコミュニケーションの基本となる「観察」の3ステップ
第2章 「自分を知る」 ―― 違和感に気づくと「自分」がわかる
自分の本音がわからない
変えられない性質は確かにある
手がかりは「どうしてもとりつくろえない瞬間」
「わかってほしかった」は「解釈のクセ」が生み出している
「自分が知らない自分」はスマホが教えてくれる
第3章 次に、「相手を知る」 ―― 人間関係の違和感から「相性」を知る
「伝える」の前に「見る」がある
「言わなくてもわかるでしょ」はマネジメントの怠慢
相手の何を「見る」のか? ―― ソーシャルスタイルの4類型
「他者の合理性」を知るヒント
「人それぞれ」では話が進まない
第4章 そのうえで、「組み合わせる」 ―― 違和感を役立て最高の組織をつくる
「今いるメンバー」で最高のチームをつくる
「好き嫌い」より「相性」を考える
それは「評価」ではなく「評判」です
「自分でやったほうが早い病」への処方せん
「似た者同士」がうまくいくとは限らない
職場は「ドレッシング状態」にならなくていい
個人と組織のサンドイッチ作戦
第5章 違和感を乗り越えるための話し方・振る舞い方
役割の実行を後押しする「面談」「相談」「雑談」「対話」
「大丈夫です」の複雑さ
「よかれと思って」が残念なワケ
待ちの姿勢ばかりの部下に「自走してほしい」と伝えたい
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えたい
コミュ力が高い人の「真の使命」は、相手に合った手段を選ぶこと
危うい場面で役に立つ「否定しない技術」
会議時間を短縮すれば「生産性」が高まるのか?
「困っている人」は「決めつけていない人」
第6章 「いてくれてありがとね」から始める組織改革
「いい人材がいない」と嘆く人は組織の価値を見落としている
「重すぎない信頼関係」のススメ
「健全に疑う」のススメ
100点を取ってきた子どもに「偉いね」と言ってはいけない理由
100%わかり合うことは無理、それでも「訂正」し合うことはできる
「自分のまま働く」ために
解説 ―― 坂井風太