2万人をみてきた組織開発コンサルタントで『組織の違和感』の著者である勅使川原真衣氏が、実際に職場に分け入って考えた、組織変革のコツを伝えます。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

組織の違和感気が利くPhoto: Adobe Stock

「気が利く人」がいると、組織は回ってしまう

 職場にいる、周囲の変化によく気づく人。

 誰かが困っていれば先回りして助ける。備品がなければ補充する。新人が入ってきたら職場のルールを伝える。

 そういう人がいると、組織はとても助かります。

 ですが、だからこそ注意が必要だと思っています。

 なぜなら、「気が利く人」が何とかしてくれる状態に、組織が慣れてしまうからです。

違和感は確実に蓄積する

 本来なら、一人の人に負担が重くなる状況は、役割分担を見直したほうがいいサインです。

 しかし、そんな小さな違和感があっても、気が利く人がそのたびに調整してくれると、表面上は問題なく回っているように見えてしまいます。

 すると周囲は、「今のやり方で大丈夫なんだ」と思ってしまう。

 でも、問題がなくなったわけではありません。

 見えなくなっただけです。

 その人の中には確実に、「また自分がやるのか」「なぜ誰も気づかないのか」という違和感が少しずつ蓄積していきます。

 そして、ある日突然、優秀な人が辞める。

 周囲は「そんなに不満があるようには見えなかった」と驚きます。

 でも実際には、ずっとサインは出ていたのかもしれません。

気づかいに頼る組織では、新しいことも生まれにくい

 さらに問題なのは、こうした組織では新しい挑戦も起きにくくなることです。

 既存の仕事を回すために、気づく人が調整や穴埋めに追われる。

 すると、本来なら改善案を考えたり、新しい事業に挑戦したりするための余白がなくなります。

 組織全体も、「誰かが何とかしてくれる」ことに慣れ、自分で違和感を見つけて変える力を失っていきます。

 気が利く人がいるのに、チームとしてはどんどん弱くなる。

 そんなことが起こり得るのです。

違和感を個人に処理させない

 組織で大切なのは、「気の利く人」が気づく度に毎回フォローすることではありません。

 その人が気づいた違和感を、組織の課題として扱えることです。

 なぜこの仕事はいつも宙に浮くのか。なぜ同じ人ばかりが調整役になるのか。

 なぜ問題が起きるたびに、誰かの善意で埋めているのか。

 そこを見直す必要があります。

 気が利く人は、組織にとって大切な存在です。

 だからこそ、その人の気づかいを「便利な仕組み」にしてはいけません。

 誰かの善意がなくても回る状態をつくる。そして、気づいた違和感を次の改善や挑戦につなげる。

 それができなければ、失うのは一人の優秀な人だけではありません。

 組織そのものが、変化する力を失ってしまうでしょう。