2万人をみてきた組織開発コンサルタントで『組織の違和感』の著者である勅使川原真衣氏が、実際に職場に分け入って考えた、組織変革のコツを伝えます。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
「仲がいい」からこそ言えない
職場の人間関係がいいことは、もちろん悪いことではありません。
雑談が多い。困ったときは助け合う。ランチにもよく行く。お互いのこともよく知っている。
周囲から見れば、雰囲気のいい職場です。
ですが、「仲がいいこと」と「働きやすいこと」は、必ずしも同じではありません。
仲がいいからこそ、言えなくなることがあるからです。
「この進め方は少し無理がある」
「本当はその役割をやりたくない」
「その発言には違和感がある」
そう感じても、「せっかく雰囲気がいいのに」「ここで水を差したくない」と思うと、つい飲み込んでしまうのです。
善意が違和感を蓄積させる
人間関係がいい職場ほど、その関係を壊したくないという気持ちも強くなります。
会議で反対意見があっても、みんなが賛成していると黙る。
誰かの仕事の進め方に問題を感じても、「本人も頑張っているし」と言わない。
負担が偏っていても、「細かいことを言う人だと思われたくない」と我慢する。
誰かに「言うな」と言われているわけではありません。
むしろ、いい雰囲気を守ろうとする善意が、異論や違和感を言いにくくしているのです。
ここに難しさがあります。
必要なことを健全に言える職場に
私は、組織を「雰囲気の良し悪し」で見るのではなく、各自が健全に違和感を表明できているかを見ることが大切だと考えています。
なぜなら、十人十色の人間同士が働く以上、違和感というのは必ず生まれるものだからです。
それをなかったことにして、個人の中だけに抱え込んでいくと、いつしかそれが決定的な断絶や業務上の隠蔽につながりかねません。
意見が違っても言えるか。
困っているときに「困っています」と言えるか。
何かおかしいと感じたときに、それを人間関係の問題にせず話せるか。
そこが大切です。
仲のよさを優先しすぎると、組織は一見なめらかに動くでしょう。ですが、違和感の蓄積は消えません。
だから、本当に働きやすい職場とは、ずっと空気がいい職場ではなく、必要なことを言える職場です。
仲のよさを守ることより、違和感を出しても関係が壊れないこと。
そのほうが、長い目で見れば、ずっと強い組織なはずです。
忙しいリーダーに、効果のあることだけ

「好き嫌い」や「やる気」、
「あうんの呼吸」に頼らず
組織を機能させるための具体策!
対話より先に、やるべきことがある。
「大丈夫です」のひとことでモヤッとしたとき、
待ちの姿勢ばかりの部下に自走してもらうにはどうしたらいいのか、
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えるための効果的な伝え方は?……
ビジネスの現場に尽きないコミュニケーションの悩みを、「マネジメント」のスキルとして、「3段階」に分けて打ち手を授けるのが本書です。
まずは土台となる「観察」のスキルを紹介。ここでは、違和感に着目するというユニークな手法をとります。
そして、「自分を知る」「相手を知る」「組み合わせる」の3段階で、関係性から組織の最適解を導き出します。
自分と相手の「持ち味」を知り、
組織をつなぎ直すための一手を
この3段階を経て、違和感を乗り越えるための伝え方や振る舞い方を具体例とともに紹介します。
スキルといっても、難しいものではありません。「あれ、今なんか変だったな」という気づきを、手がかりにつかむこと。
さらに本書では、「持ち味」を知るためのいくつかの診断も掲載。すぐにチームに実装できるような作りにしています。
事前に特別な準備や学習はまったく不要。やるべきことが明確になり、現場のもやもやがクリアになります。
いつでも「今ここ」での気づきから組織を改善できる。行き詰まった状態を打開する新鮮な方策が詰まった、忙しいリーダーの支えになる一冊です。

本書の内容
はじめに
ギリギリな組織の頼みの綱は
人それぞれが「正しさ」を生きている
「持ち味」の組み合わせと「解釈」のクセ
第1章 違和感とは何か? ―― 「決めつけ」が横行する現場で
観察の達人!? コナンくん
仕事に本音はいらない
「なんか変な感じ……」の正体
人はみな「違う色のメガネ」をかけている
「職場のすれ違い」は決めつけから生まれる
とにかくみんな疲れている
すべてのコミュニケーションの基本となる「観察」の3ステップ
第2章 「自分を知る」 ―― 違和感に気づくと「自分」がわかる
自分の本音がわからない
変えられない性質は確かにある
手がかりは「どうしてもとりつくろえない瞬間」
「わかってほしかった」は「解釈のクセ」が生み出している
「自分が知らない自分」はスマホが教えてくれる
第3章 次に、「相手を知る」 ―― 人間関係の違和感から「相性」を知る
「伝える」の前に「見る」がある
「言わなくてもわかるでしょ」はマネジメントの怠慢
相手の何を「見る」のか? ―― ソーシャルスタイルの4類型
「他者の合理性」を知るヒント
「人それぞれ」では話が進まない
第4章 そのうえで、「組み合わせる」 ―― 違和感を役立て最高の組織をつくる
「今いるメンバー」で最高のチームをつくる
「好き嫌い」より「相性」を考える
それは「評価」ではなく「評判」です
「自分でやったほうが早い病」への処方せん
「似た者同士」がうまくいくとは限らない
職場は「ドレッシング状態」にならなくていい
個人と組織のサンドイッチ作戦
第5章 違和感を乗り越えるための話し方・振る舞い方
役割の実行を後押しする「面談」「相談」「雑談」「対話」
「大丈夫です」の複雑さ
「よかれと思って」が残念なワケ
待ちの姿勢ばかりの部下に「自走してほしい」と伝えたい
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えたい
コミュ力が高い人の「真の使命」は、相手に合った手段を選ぶこと
危うい場面で役に立つ「否定しない技術」
会議時間を短縮すれば「生産性」が高まるのか?
「困っている人」は「決めつけていない人」
第6章 「いてくれてありがとね」から始める組織改革
「いい人材がいない」と嘆く人は組織の価値を見落としている
「重すぎない信頼関係」のススメ
「健全に疑う」のススメ
100点を取ってきた子どもに「偉いね」と言ってはいけない理由
100%わかり合うことは無理、それでも「訂正」し合うことはできる
「自分のまま働く」ために
解説 ―― 坂井風太