感じのいい人を見ると、「もともと明るい性格だから」と思ってしまいがちです。しかし坪田信貴さんは、一流美容師から意外な習慣を教わりました。社員にも実践してもらったところ、1カ月後には職場の雰囲気まで変わったといいます。「感じのよさ」は、生まれつきではなく身につけられるものなのでしょうか。本稿は、坪田信貴著『育てる。』(ダイヤモンド社)から一部を抜粋して紹介する。
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一流の美容師さんから教わった意外なこと
感じのいい人を見ると、
「もともと明るい性格なんだろう」
「人づきあいが得意なんだろう」
と思うかもしれません。
僕も以前は、笑顔というのは自然に出るもので、わざわざ練習するものだとは考えていませんでした。ところが、ある一流の美容師さんから、まったく違うことを教えてもらったのです。
僕の尊敬する友人に、MAYUMIさんこと山本真由美さんという美容師さんがいます。テレビ番組『TVチャンピオン』の「全国美容選手権」で二度優勝し、全国ヴィダルサスーン杯も3年連続入賞されている、この道40年以上の美容師さんです。
僕が日本一だと思っている美容師さんなのですが、とにかく明るい。おしゃれで、よくしゃべり、お会いするたびに、こちらが元気をいただきます。
「笑顔の練習なんて、するものなんですか?」
そんなMAYUMIさんと何度目かにお会いしたとき、突然こう聞かれました。
「坪田先生は、素敵な笑顔ですよね。笑顔の練習って、どんなふうにされていますか?」
最初、僕は質問の意味がわかりませんでした。
「笑顔の練習? 笑顔って、練習するものなんですか?」
そう聞き返すと、MAYUMIさんは、むしろ僕のほうに驚かれました。
「坪田先生。先生には練習は必要ないかもしれません。でも、従業員には絶対に必要です」
そして、こう教えてくれました。
「私たちサービス業のサービスは、笑顔で始まるんです」
「いらっしゃいませ」という言葉は、音速で相手に届きます。でも、笑顔はそれよりも速い。光の反射によって相手の目に届くのですから、文字通り光速です。
どれだけ丁寧に、「いらっしゃいませ」と言っていても、顔が無表情だったり、鬼のような形相だったりすれば、「歓迎されていない」「機嫌が悪そうだ」という印象が先に届きます。MAYUMIさんは、さらにこう言いました。
「クラシックの演奏家は、本番だけ演奏するわけではないでしょう。必ずリハーサルをしますよね。笑顔も同じです。家を出る前に、鏡の前で笑顔のリハーサルをするのは当たり前なんです」
僕は、その言葉に衝撃を受けました。
「笑っているつもり」と、「相手から笑顔に見えること」は別なのです
僕たちは、プレゼンテーションの練習はします。授業の準備もします。営業で話す内容も考えます。ところが、その言葉を伝えるときの「顔」は、ほとんど練習していません。
そこで僕は、従業員向けに笑顔の研修を行うことにしました。お客様が入ってきた瞬間を想定し、「いらっしゃいませ」と笑顔を向けてもらう。そして、その様子を撮影し、自分自身の表情を確認してもらいました。すると、ほぼ全員が、自分の笑顔を見て、
「全然笑えていない」
「顔が引きつっている」
「こんな顔をしていたんですか」
と言いました。本人たちは、もちろん笑っているつもりです。しかし、「笑っているつもり」と、「相手から笑顔に見えること」は別なのです。
そこで僕も含めて、毎日一回、笑顔の練習をすることにしました。最初は、みんなぎこちない。鏡を見ながら笑っている自分が恥ずかしくて、照れてしまいます。でも、1カ月ほど続けると、明らかに表情が変わりました。社員からも、
「最近、みんな明るくなった気がする」
という声が出るようになり、お客様からも同じようなことを言っていただくようになりました。社員の性格が、1カ月で別人になったわけではありません。ただ、表情が変わった。それだけで、組織全体の空気まで変わって見えるようになったのです。
笑顔も性格ではなく技術
僕はそこで、笑顔も性格ではなく技術なのだと知りました。「私は愛想がない性格だから」「人見知りだから」と性格の問題にしてしまえば、そこで終わります。でも、
「いまは、相手に安心を与える表情の技術が足りないだけだ」
と考えれば、練習できます。
人を育てるときも同じです。「もっと愛想よくしなさい」「もっと感じよくしなさい」と性格を責めるのではなく、「相手が安心できる表情を、一緒に練習してみよう」と、できるようになる方法を伝えればいいのです。








