具体的な目標を示しているのに、部下が動かない。そんなとき、目標そのものが高すぎないかを疑う必要があります。本人が「少し頑張れば届きそう」と思えなければ、それは目標ではなく絶望になってしまうからです。坪田信貴さんが目安にするのは「○6割、×4割」。人が伸びる課題の与え方とは。本稿は、坪田信貴著『育てる。』(ダイヤモンド社)から一部を抜粋して紹介する。
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本人が、「そんなの絶対無理じゃん」と思っていたら、それは目標ではありません。ただの絶望です
部下が伸びない上司ほど、良かれと思って「高すぎる目標」を与えてしまうことがあります。目標は高いほうがいい。大きな目標を掲げれば、人はそれに向かって努力する。そう考えたくなりますが、必ずしもそうではありません。
たとえば、英語が学年でほぼ最下位の子に、「次の試験で100人抜こう!」と言う。今月100万円しか売れていない営業マンに、「来月は1000万円売ろう!」と言う。どちらも、目標としては具体的です。
でも、本人が、「そんなの絶対無理じゃん」と思っていたら、それは目標ではありません。ただの絶望です。もちろん、本人がそれを聞いて、「よし、やってやろう!」と本気で思えるのであれば構いません。でも、目の前にいきなり高い壁を置かれたら、多くの人は登ろうとする前に立ち止まります。
つまり、人を育てるときの目標設定で一番避けたいのは、本人が「どうせ無理だ」と思う高さの課題を、いきなり与えることです。
反対に、何の努力もせずにできる課題ばかりを与えていても、人は成長しません。
人を育てる側に必要なのは、いまの相手の力を見ながら、「少し頑張れば、できるかもしれない」と思える高さの課題を渡すことです。
高い壁でも、足をかけられる階段が一段あれば、まずそこへ上ってみようと思えます。
人を育てるとは、遠くにある夢を見せるだけではありません。その夢と、いまいる場所との間に、上れる高さの階段をつくることなのです。
○が6割、×が4割くらいがちょうどいい
では、どのくらいの難易度の課題を与えればよいのでしょうか。
簡単すぎても、人は成長しません。難しすぎても、すぐに諦めます。僕の感覚では、◯が6割、×が4割くらいが、ちょうどいい。
いまの自分でも、半分以上はできる。でも、全部はできない。少し考えたり、練習したり、工夫したりすれば、できなかったものにも届きそうな感じがある。そのくらいです。
もちろん、人や課題によって、適切な割合は変わります。「必ず6対4にしなければいけない」という話ではありません。大切なのは、できることと、まだできないことの両方があり、本人が努力による変化を感じられる難易度になっていることです。
たとえば、10問の問題を出して、毎回1問しか解けないなら、難しすぎます。本人は、「やっぱり自分には無理だ」と感じます。反対に、10問すべてが何も考えずに解けるなら、簡単すぎます。できたという満足感はあっても、成長は小さい。
6問くらいできて、4問くらい間違える。そして、その4問を練習すると、次は7問、8問と解けるようになる。すると、「頑張ったら、本当にできることが増えた」と実感できます。この感覚が、人を次の一歩へ動かします。
長期目標は大きく。しかし、目の前の課題は、いまの本人が攻略できる難易度に
僕は、人生を一種のロールプレイングゲームのように捉えることがあります。
ゲームを始めたばかりのレベル1の主人公に、いきなりラスボスを倒せというゲームがあったら、誰もやらないでしょう。
最初は、倒せる敵が出てくる。少し戦う。経験値がたまる。レベルが上がる。新しい武器が手に入る。すると、それまで倒せなかった敵を倒せるようになる。そして少しずつ、より強い敵に挑戦していく。だから面白いのです。人材育成も同じです。
「世界で活躍する人になろう」
「売上1兆円の会社をつくろう」
「3年後には英語をナチュラルに話せるようになろう」
という長期目標は、呆れるくらい大きくて構いません。でも、今日の課題までラスボスにしてはいけない。今日やることは、
「英単語を5個覚える」
「1分だけでも机に向かう」
「新しいお客様に3件電話する」
くらいでいい。それができたら、次の一段へ進む。長期目標は大きく。しかし、目の前の課題は、いまの本人が攻略できる難易度にする。この二つを混同してはいけません。








