ノーベル賞の登竜門・ラスカー賞受賞で話題! 睡眠学の世界的権威・柳沢正史教授が、最新研究をもとにやさしく解説した著書『世界最高の睡眠学が教える 睡眠の正解』が話題です。巷にあふれる睡眠の常識・思い込みの真偽を解き明かしつつ、「眠れない」「起きられない」「寝ても疲れがとれない」といった悩みの解消法を提唱します。あなたが本来の自分を取り戻し、よりよい明日を迎える睡眠のヒントをお届けします。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局・中村直子)

第一志望に受かった子は1時間長く寝ていた! 睡眠学者・柳沢正史が明かす「眠る時間を惜しんで勉強」が逆効果なワケPhoto: Adobe Stock

成績がいい子は、なぜよく眠っているのか

「四当五落」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

 4時間しか眠らずに勉強した者は受かる、5時間も眠ってしまう者は落ちる――。

 ひと昔前まで、受験の世界でまことしやかに語られていた言葉です。

 この言葉を、どれほど多くの親や子どもが真に受けてきたのでしょうか。

「睡眠時間を削ってでも勉強することは偉い」という価値観は、長いあいだ受験勉強の世界に残ってきました。いまでも「寝る時間があるなら勉強しなさい」「受験期なのだから睡眠を削るのは仕方ない」といった考え方は、完全にはなくなっていません。

 しかし、睡眠学が突き止めた真実は、この常識とは正反対のものでした。

 よく眠っている子のほうが、勉強ができる。眠る時間を削って勉強した子のほうが、結果として成績が伸び悩む――。

 データが、はっきりとそう示しているのです。ある調査では、第一志望に合格した子たちは合格できなかった子たちよりも、平均しておよそ1時間も長く眠っていました。

くわしくは…
朝日学生新聞社が行った、過去2年間の中学受験経験者の保護者を対象にしたアンケート調査です。子どもたちの平日の睡眠時間を、第一志望合格者と不合格者で比較したところ、合格者群の睡眠時間の分布は、不合格者群よりもはっきりと“長い側”に寄っていました。

平均値で比較すると、合格者と不合格者ではおよそ1時間の差。合格者の中には、9時間以上眠っていた子も少なくありませんでした。しかも、そうした子たちの多くは、ふつうに塾にも通っていたと報告されています。

 第一志望に合格した子たちは、勉強時間を削って眠っていたのではなく、勉強と十分な睡眠を両立させていたのです。

「眠る時間を惜しんで勉強する」が、いちばん損をする

 なぜ、こんな結果になるのでしょうか。ここで、自分自身の学生時代を振り返ってみてください。

 試験前夜、徹夜に近い形で一夜漬けをした経験は、誰しもあるでしょう。徹夜で必死に詰め込み、なんとか翌朝の試験を乗り切った。それなのに、試験が終わった瞬間、覚えていたはずの内容が、すっと頭から抜け落ちていく。1週間後には、ほとんど何も思いだせない。

 あれは気のせいでも、記憶力が悪いせいでもありません。睡眠不足が原因です。私たちの脳は、眠っているあいだにその日に学んだ内容を記憶として定着させます。つまり、睡眠時間を削って勉強しても、せっかく覚えたことが身につきにくいのです。

 私たちの脳は、眠っているあいだに、その日に学んだ内容を整理し、本番で取りだせる形に焼きつけています。眠ることは、勉強をサボることではありません。むしろ、勉強の成果を定着させるために欠かせないプロセスなのです。つまり、睡眠時間を削って勉強する子は、一生懸命机に向かっていても、その努力の大半が空回りしています