「日本は幸福度ランキングで先進国最下位らしい」「この国にいても幸せになれない」「日本人はやっぱり不幸なんだ」。毎年のように報じられる幸福度ランキングを見て、そう感じたことがある人もいるかもしれません。しかし、その数字だけで日本人は不幸だと決めつけるのは、少し早いかもしれません。ウェルビーイング研究の第一人者である前野隆司氏は著書『幸せの人類史 なぜ「幸福」は人類を「不幸」にしたのか』の中で、ランキングの順位だけでは見えてこない、日本人の幸福度の意外な実像について語っています。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

「日本人は不幸だ」と思い込んでいる人が知らないことPhoto: Adobe Stock

「日本は先進国中最下位」は本当か

毎年3月20日の国際幸福デーに、国連の「ワールドハピネスレポート」が発表される。
そのたびに、「今年も日本は先進国中最下位」と話題になる。

この調査は、「最悪の人生を0点、最高の人生を10点としたとき、あなたの人生は何点ですか」という質問への回答を、国ごとに平均したものだ。

しかし前野隆司氏は、この調査方法に違和感を持っているという。
カギになるのは、平均点ではなく、回答の分布だ。

日本人の幸福度は「二山」だった

回答の分布を地域ごとに比べると、東アジアでは5点が、北米・豪州・ニュージーランドでは8点がピークになる。
ところが日本だけは、5点と8点の二か所にピークがある。
前野氏は、その理由をこう説明する。

東アジアのような集団主義的な傾向の強い文化圏では、最悪が0で最高が10だといわれると、自分の人生は普通だから5と答える国民が多いと考えられます。周りとの調和を重視しますから、自分だけ高い点をつけることは、はばかられます。また、中庸や平穏無事な幸福感を重視する傾向も影響するでしょう。
一方、個人主義的な文化圏では自分に自信を持ち自立することが優れていると考える傾向が強いので、北米などの個人主義的な国家では「自分はもちろん幸せ」と自信を持って8や7と答える人が多いのではないでしょうか。
日本だけ二山なのは、集団主義的な考え方と個人主義的な考え方が混在している、つまりアジア的思考の国民と欧米的思考の国民の、二つの思考が拮抗する国と考えることができそうです。統計的に見て、日本人は一つの集団というよりも二つの正規分布の重ね合わせから成る多様な人々と考える方が妥当なのです。

――『幸せの人類史 なぜ「幸福」は人類を「不幸」にしたのか』より

つまり、日本人の幸福度は単に低いのではなく、考え方の異なる二つのタイプの人が混ざり合っているということだ。

5点と答えた人の中には、本当は満足していても、周りとの調和を大切にして控えめに答えている人も少なくないだろう。
平均点だけを見ていては、そうした実像は見えてこない。

しかも、別の調査では、まったく違う結果が出ている。
オランダ・エラスムス大学の世界幸福データベースによると、日本の幸福度は先進国の中で中程度だ。
アンケートの取り方が少し変わるだけで、日本の順位は最下位にも中程度にもなるのだ。

順位に振り回されず、自分の幸せを見つめよう

ランキングの調査結果は、調査方法や調査された人が持つ文化背景によって大きく異なる。
そのことを知っていれば、「日本人は不幸だ」という思い込みから解放されるかもしれない。

数字の裏側には、一人ひとりの多様な幸せがある。
そう知るだけでも、この国で暮らす毎日が、少し違って見えてくるはずだ。