どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊『客単価アップ大事典「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます。

なぜAmazonは、商品を安くしてまで「定期おトク便」をすすめるのか?Photo: Adobe Stock

わざわざ値引きしてまで、
定期にしてほしい理由

 Amazonの「定期おトク便」を使っている方も多いでしょう。洗剤やトイレットペーパー、飲み物など、繰り返し買う商品を、あらかじめ決めた間隔で届けてくれるサービスです。

 定期おトク便にすると価格が割り引かれ、同じ月に同じ届け先へ3件以上届く場合には「おまとめ割引」も加わります。商品によっては最大15%引きになります。

 ただ、売る側の立場で考えると少し不思議です。

 どうせ定期的に必要になる商品なら、毎回通常価格で買ってもらったほうが儲かるはずだからです。販促の観点から読み解くと、この割引にははっきりした狙いがあります。

 Amazonが大事にしているのは、一回の注文の金額ではありません。「次も、Amazonで買ってもらえるかどうか」なのです。

なくなるたびに、
お客様は店を選び直している

 洗剤が切れそうになったときのことを思い出してみてください。

 ネットで検索して、値段を見比べて、注文する。たいていは、そんな流れです。

 この流れの中には、「今回はどこで買おうか」と考える場面が必ず入っています。前回Amazonで買った人でも、ドラッグストアが特売なら、帰り道にそちらで買ってしまうかもしれません。

 毎回注文してもらう商売は、裏を返せば、毎回お客様に選び直されている商売でもあります。

一度設定すると、
やめる理由がない限り続く

 定期おトク便を設定すると、この流れががらりと変わります。何もしなければ、次の商品が勝手に届くからです。

 通常の買い物では、買うためにお客様が動く必要があります。定期便ではその反対で、買わないために動く必要が出てきます。

 特に不満なく使っている洗剤なら、わざわざ手続きをして止めようとは思わないでしょう。人は特別な理由がなければ今の状態を続けやすく、行動経済学ではこれを「現状維持バイアス」と呼んでいます。

 最初の一回の設定で、その後の買い物まで決まってしまう。販促の面から見ると、ここが一番大きなポイントです。

割引は、買い方を変えてもらうための「きっかけ代」

 では、なぜ割引までするのか?

 もし通常購入と定期便が同じ値段なら、わざわざ配送の間隔を設定しようとは思いません。「定期にすると安くなる」から、「どうせ来月も使うし」と切り替える気になるわけです。

 つまり、この割引はただの値下げではありません。「その都度買う」から「自動で届く」へ、買い方を変えてもらうための「きっかけ代」のようなものなのです。

 おまとめ割引が3件以上という条件になっているのも、うまいところです。

 1つ定期にした人が「あと2つ増やせばもっと安くなる」と考えれば、定期で届く商品が自然と増えていきます。

注文忘れと価格比較、
両方の取りこぼしを防ぐ

 日用品は、欲しくて買うものではなく、なくなったから仕方なく買うものがほとんどです。

 だから「そろそろ頼まないと」と思っても、つい後回しにしがちです。気づいたときには切れていて、近所のコンビニで買ってしまう。そんなことがよく起こります。

 定期便ならそもそも注文する必要がないので、こうした取りこぼしが起きません。

 それに、通常購入なら買うたびに値段を見比べますが、定期便にすると比べる機会そのものが減ります。毎回ほかより安くして選ばれ続けるのは大変ですが、そもそも比べられなければ、その競争に巻き込まれずに済みます。

「ついで」の商品が増えていく

 定期便をいくつか使っていると、管理画面に「定期で届く商品」が並びます。洗剤のついでにトイレットペーパーも、ついでに飲み物も、と増やしていく人も多いのではないでしょうか。

 こうなると、日用品の買い物のかなりの部分が、Amazonの定期便でまかなわれるようになります。お客様は、買い物のたびに考えなくて済むので楽です。Amazonにとっては、一人のお客様の日用品をまとめて任せてもらえることになります。

 一つひとつは安い日用品でも、まとめて、しかも毎月となれば、年間ではそれなりの金額です。ここにこそ、定期便の本当の強さがあります。

やめやすいから、始めてもらえる

 定期おトク便は、配送のスキップや数量・間隔の変更、キャンセルができます。

 簡単にやめられたら売上が減るように思えますが、実はその逆です。「1年間は解約できません」と言われたら、最初の申し込みをためらう人のほうが多いはずです。

 いつでも止められるという安心があるから、「とりあえずやってみよう」と思えるのでしょう。

他のお店でも使える
「次の購入を自動化する」しくみ

・コーヒー豆店
 注文のたびに来てもらうのではなく、「毎月1日に500グラム」と決めてもらい、なくなる頃に届くようにする。

・ペットショップ
 ドッグフードや猫砂を、ペットの体重や食べる量から次に必要な時期を見込んで届ける。

・化粧品店
 使い切る時期が読みやすい化粧水を定期便にして、「買い忘れない」こと自体を便利さとして伝える。

まとめ

 この仕組みのポイントを整理すると、

・商品がなくなるたびに「どこで買うか」を考える場面をなくす
・一度設定してもらうことで、「次も買う」が普通の状態になる
・割引を、買い方を切り替えてもらうきっかけにする
・3件以上で割引が増える条件で、定期で届く商品を増やす
・注文忘れや価格比較による取りこぼしを減らす
・やめやすくして、始めるハードルを下げる

 といった狙いが考えられます。少し安くしてでも、毎回選んでもらう商売から、黙っていても買い続けてもらえる商売に変えていく。定期おトク便は、そのための販促の仕組みなのです。

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。