どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊『客単価アップ大事典「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます。
Photo: Adobe Stock
買った後なのに、
なぜ無料で直してくれるのか?
パンツを買ったあと、「もう少し短くすればよかった」「履いてみたら、いつもの靴には少し長かった」と感じることがあります。
普通なら、購入するときに裾上げを頼まなかったのだから、「後から直すなら有料」でも不思議ではありません。
ところがそのアパレルショップでは、購入後でも店舗で裾直しを受け付けています。
なぜ、新しいパンツを売りたいはずのお店が、すでに買ったパンツを無料で直してくれるのでしょうか。
販促の観点から見ると、これは、売った商品を少しでも長く使ってもらうことが、次の購入につながる仕組みと考えることができます。
小さな「合わない」が、
その商品を着なくする
パンツは、試着した瞬間には問題なく見えても、実際の生活で履いてみると印象が変わることがあります。スニーカーならちょうどいいけれど、革靴だと少し長い。
立っているといいけれど、歩くと裾を踏みそうになる。洗濯後に丈の印象が変わった。そんな、「返品するほどではないけれど、少し気になる」という不満です。
こうした小さな不満が残ると、だんだん履かなくなります。すると、「あそこで買ったパンツ、結局あまり履かなかったな」という記憶だけが残ってしまいます。
商品そのものに大きな問題がなくても、使わなくなったという事実が、ブランドへの評価を下げることがあるのです。
無料で直せると、
「失敗した買い物」が「お気に入り」に変わる
そこで、「後からでも直せます」という出口を用意します。
例えば、少し長かったパンツを無料で3cm短くしてもらい、履きやすくなったとします。すると、そのパンツは、「丈を失敗した商品」から、「自分にちょうどいいパンツ」へ変わります。
お客様にとって大切なのは、最初から完璧な商品だったかどうかだけではありません。
最終的に、自分が気持ちよく使えたかどうかです。買った後の小さな不満を解消することで、商品の評価そのものを後から高めることができるのです。
商品を長く使ってもらっても、
次の販売機会はなくならない
一見すると、商品を長く使ってもらえば、買い替え時期が遅くなります。それなら、「少し合わなくなったら、新しいパンツを買ってもらったほうがいい」とも考えられます。
しかし実際には、気に入らない商品を早く手放した人が、次も同じブランドを買うとは限りません。
むしろ、「あそこのお店で買えば、後からでも調整してもらえる」「長く履けた」という経験が残れば、次のパンツを買うときに、「またあそこで買おう」という理由になります。
つまり、一回の買い替えを早めるより、「次もあそこで買おう」という信頼を残すほうが、長期的には価値が大きい場合があるのです。
裾直しが、
もう一度店舗へ来る理由になる
購入後の裾直しには、もう一つ大きな意味があります。それは、お客様をもう一度店舗へ戻せることです。
パンツを買ったあと、何もなければ、次に店舗へ来るのが数カ月後になるかもしれません。
しかし、「裾を少し直したい」となれば、もう一度店舗へ行きます。そのときに、新しいシャツを見る。靴下を見る。季節商品を見る。生活雑貨を見る。という新しい接点が生まれます。
つまり無料の裾直しは、アフターサービスであると同時に、購入後のお客様を、もう一度売り場へ戻す来店理由にもなるのです。
お直し履歴まで、
次の購入を楽にする
一部店舗では、アプリを利用すると、お直しの履歴を残せると案内しています。以前の寸法が分かれば、次に同じパンツを購入するときも、「前回と同じ長さで」と頼みやすくなります。これは非常に重要です。
次の買い物で、また試着して、また丈を測って、また一から考える必要がありません。すると、他店で買うより、「自分のサイズを分かってくれているあのお店で買うほうが楽」となります。
商品だけではなく、過去の購入・調整経験そのものが、次も同じ店を選ぶ理由になっていくのです。
「売ったら終わり」ではなく
「使い続けるところまで」が商品になる
多くのお店では、商品を渡した瞬間に販売が終わります。しかしお客様にとっては、そこからが始まりです。
買う
↓
使う
↓
少し不満が出る
↓
調整する
↓
気持ちよく使い続ける
というところまで体験して、初めて、「良い買い物だった」と判断します。
つまり裾直しは、パンツという「モノ」だけを売っているのではありません。自分に合った状態で長く使えるところまでを、一つの商品体験として提供していると考えることができます。
他のお店でも使える
「買った後の小さな不満を無料で直す」設計
この考え方は、衣料品以外でも応用できます。
・メガネ店
購入後、「少しずれる」「耳が痛い」という人に、無料でフィッティング調整を行う。使わなくなる理由を消し、次のメガネ購入にもつなげる。
・靴店
購入後に、中敷きや靴ひもの調整、簡単なフィッティング相談を無料にする。「買ったけれど足に合わなかった」という失敗体験を減らす。
・家具店
購入後に、棚板の高さ調整や簡単な設置相談などを行う。生活の中で使いやすい状態にすることで、次の家具や関連商品の相談先になる。
まとめ
この仕組みを販促の観点から整理すると、次のような効果が考えられます。
・購入後に生まれる「少し長い」「ちょっと合わない」という小さな不満を解消する
・使わなくなる商品を、自分に合った「お気に入り」に変える
・商品を長く使ってもらうことで、「次もこのブランドで買いたい」という信頼を作る
・裾直しを理由に、購入後のお客様をもう一度店舗へ戻す
・過去の調整履歴を残すことで、次回購入時の手間を減らす
という、「早く買い替えてもらう」のではなく、「買った商品を気持ちよく使い切ってもらう」ことで、次も同じブランドを選びやすくする販促の仕掛けなのです。
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。




