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なぜコーヒー店は、2杯目を1杯目より大幅に安くするのか?Photo: Adobe Stock

なぜ1杯目と同じ値段を取らないのか?

 あるコーヒー店では、コーヒーを購入すると、その日の2杯目を特別価格で楽しめます。

 普通なら、2杯目も同じ価格で売ったほうが売上は増えそうです。それなのに、なぜ2杯目だけ大幅に安くするのでしょうか。

 実はこれ、1杯目の売上を少し増やすのではなく、「今日はもう1杯買う」という2回目の行動を作る仕掛けと考えることができます。

1杯目と2杯目では、
「買う理由」が違う

 朝、会社へ行く前にコーヒーを買う。この1杯目には、「コーヒーが飲みたい」という明確な理由があります。
しかし午後になって、「もう1杯飲もうかな」と思ったときはどうでしょうか。

 500円なら、「今日はもういいか」となるかもしれません。

 つまり2杯目は、欲しくないわけではないけれど、定価をもう一度払うほどではないという状態になりやすいのです。

 そこで、「2杯目は150円」となると判断が変わります。「その値段なら、もう1杯飲もう」となります。

 つまり値下げしているのは、商品価値が低いからではありません。2回目の購入にだけ存在する心理的なハードルを下げているのです。

値引きするなら、
「買うか迷っている2杯目」のほうが効果的

 例えば、1杯目500円、2杯目500円なら、1杯しか買わない人の売上は500円です。

 一方、1杯目500円、2杯目150円として、「150円ならもう1杯」という人が増えれば、合計650円になります。

 もちろん実際の収益構造は商品原価や店舗運営費などで変わりますが、販促として重要なのは、定価では発生しなかった追加購入を生み出すことです。

 1杯目を50円値引きして450円にしても、もともと買う予定だった人の売上を減らすだけになる可能性があります。

 しかし2杯目だけ安くすれば、「買う予定がなかった1杯」を新しく作れます。つまり、既存の売上を値引きするのではなく、まだ存在していない2回目の売上にだけ特典を付けるという考え方なのです。

「もう1杯」が、
もう一度店へ行く理由になる

 このシステムは、同じ店舗で2杯飲まなければならないわけではありません。

 例えば、

 朝、駅前のコーヒー店で1杯
 ↓
 午後、会社近くの同じブランドのコーヒー店で2杯目

 という使い方ができます。

 すると1杯目の購入が、その日の後半にもう一度そのブランドのコーヒー店へ行く理由になります。

 普通なら午後は、コンビニ、自動販売機、別のカフェ、という選択肢もあります。

 しかし、「今日は同じブランドで買えば2杯目が安い」という理由があると、次のコーヒーも同じブランドを選びやすくなります。

 つまり、一店舗の滞在時間を伸ばすだけでなく、その日の複数の生活場面をその系列のカフェでつなぐ仕掛けにもなっているのです。

1杯目を会員カードで払う理由
まで作っている

 さらに面白いのが、1杯目の支払い方法によって、2杯目の価格が変わることです。Web登録済みのカードで支払えば、2杯目は一般価格よりさらに安くなります。

 するとお客様は、「どうせ1杯目を買うなら、登録済みカードで払ったほうが得」と考えます。

 つまり、

 1杯目を買う
 ↓
 会員カードを使う
 ↓
 2杯目がさらに安くなる
 ↓
 また利用する

 という流れができます。

 単に会員登録するとポイントがもらえるのではありません。会員になると、その日の次の購入がすぐ得になるため、メリットを短時間で実感できます。

 これも非常に重要です。

 会員制度は、「いつか得する」より、「今日もう一度得する」ほうが価値を感じてもらいやすいからです。

2杯目では、
別の商品やカスタマイズも試してもらえる

 そのコーヒー店では、1杯目が普通のコーヒーでも、2杯目を違うコーヒーにするなど、対象内で種類を変えることもできます。

 HOTとICEDを変えたり、カスタマイズを追加したりすることもできます。

 すると2杯目は、単なる同じ商品の追加購入ではなく、「別の飲み方を試してみよう」という体験になります。

 その結果、「この飲み方も好きだ」という発見が生まれれば、次回は最初からその商品やカスタマイズを注文するかもしれません。

 つまり2杯目の割引は、新しい商品の試食・体験機会にもなっているのです。

「今日だけ」が
2回目の購入を先延ばしさせない

 そのコーヒー店では2回目の購入が割引になるのが、原則として1杯目を購入した当日です。

 これもポイントです。もし、「1カ月以内なら使えます」だったら、「また今度」となって忘れるかもしれません。

 しかし、「今日なら安い」となれば、「夕方にもう1杯飲もう」と、その日の行動に変わりやすくなります。

 つまり、2杯目を安くするだけではなく、利用期限を短くすることで、追加購入を今日中の行動に変えているのです。

他のお店でも使える
「2回目だけ大幅に安くする」設計

 この考え方は、コーヒー店以外でも応用できます。

 ・飲食店
 ランチ利用者に、「今日の17時以降なら、テイクアウト商品を特別価格」と案内する。昼の1回だけで終わらせず、同じ日の夕方に2回目の売上を作る。

 ・温浴施設
 入浴後に、「本日中の再入館なら半額」という仕組みを作る。一度帰宅した人にも、夜にもう一度利用する理由を作る。

 ・観光施設
 午前中の利用者に、「同日夕方の別イベントは特別価格」と案内する。一回の来場を、その日の2回目の有料体験へつなげる。

まとめ

 この仕組みを販促の観点から整理すると、

 ・定価では買わなかったかもしれない2杯目の心理的ハードルを下げる
 ・1杯目を値引きせず、「まだ存在していない追加購入」にだけ特典を付ける
 ・別店舗でも使えるようにし、その日の複数の生活場面で同じブランドを選ぶ理由を作る
 ・会員カード利用者をさらに安くすることで、会員になるメリットをその日のうちに体験させる
 ・2杯目を新しい飲み方やカスタマイズの体験機会にする
 ・当日限定にすることで、「また今度」ではなく「今日もう一度」という行動を促す

 という、「1杯を安く売る」のではなく、「1回の購入を、その日の2回目の購入へ伸ばす」ことで客単価と利用回数を増やす販促の仕掛けなのです。

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。