どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます。
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高い会費をもらったうえに、
お金まで返す理由
コストコの個人会員には、2つの種類があります(2025年5月の改定後)。
年会費5,280円(税込)の「ゴールドスター会員」と、年会費10,560円(税込)の「エグゼクティブ会員」です。
エグゼクティブ会員の年会費はちょうど2倍です。そのかわり、1年間にコストコで買った金額の2%が、「エグゼクティブリワード」として戻ってきます(上限は年11万円)。
高い会費をもらっておきながら、さらに買い物金額の2%を返す。たくさん買う人ほど返す額も増えるわけですから、店側から見れば損をしているようにも見えます。
販促の観点から読み解くと、コストコの狙いは会費の差額で稼ぐことではありません。「買い物をするならコストコで」と考えてもらい、1年間の買い物の量そのものを増やすこと。そこにこそ狙いがあるといえます。
「元を取りたい」という気持ち
エグゼクティブ会員は、ゴールドスター会員より5,280円多く払っています。この差額を2%の還元で取り戻すには、年間26万4,000円、月にするとおよそ2万2,000円の買い物が必要です。
「元を取るための金額」がはっきり見えると、行動が変わります。それまで近所のスーパーで買っていたものも、「どうせならコストコで」となりやすくなるのです。
すでに払ったお金を無駄にしたくない、という気持ちは誰にでもあります。行動経済学では「サンクコスト効果」と呼ばれるものです。
冷静に考えれば、払ってしまったお金にとらわれる必要はないのですが、実際にはなかなかそうはいきません。高い会費は、それ自体が「もっと使おう」という理由になるわけです。
ほかの店で買うと「もったいない」
1万円分の日用品を買うとき、エグゼクティブ会員には「コストコで買えば200円分戻ってくる」という条件が加わります。
こうなると、ほかの店で買うことが、もらえるはずだった還元を逃すことのように感じられてきます。人は得をする喜びより、損をする痛みのほうを強く感じやすいといわれます(損失回避)。
その結果、食品はコストコ、日用品はドラッグストア、と分かれていた買い物を、なるべくコストコにまとめようと考える人が増えるはずです。
還元が一年分積み上がる意味
その場で5%引きなら、レジを出た時点で話は終わりです。ところが年間購入額に応じた還元は、買えば買うほど積み上がっていきます。
すると、「ここまでコストコで買ってきたのだから、次もコストコで」という気持ちになります。1年間しっかり使った人ほど、「来年もエグゼクティブを続けよう」と思うでしょう。
2%という数字は小さく見えますが、一年単位で積み上げることで、一回の買い物ではなく1年分の買い物をコストコに集める効果が生まれます。
会費を払った店には、足が向く
普通のスーパーなら、行かなくても損はしません。でも会費を先に払っている店は、行かないと損をした気分になります。
来店の回数が増えれば、予定になかった商品も目に入ります。「せっかく来たから」とカートに入れるものも増えるでしょう。
しかもエグゼクティブ会員は、高い会費を自分で選んでいます。「上位会員にしたのは正解だった」と思いたい気持ちも、利用を後押しするはずです。
無料のポイントカードとの違い
買えばポイントが貯まる仕組みは、どこの店にもあります。ただ、無料のポイントカードなら「今日は別の店でいいか」と気軽に考えられます。
エグゼクティブ会員が違うのは、お客様が自分でお金を払ってこの立場を選んでいるところです。還元を受けたいから買う、というだけでなく、選んだ以上は使い倒したいから買う。そういう理由まで生まれます。
一度この流れに入ると、ほかの店へ買い物を移すことは、払った会費も貯まるはずの還元も中途半端にすることになります。こうして、店との関係は切れにくくなっていきます。
ほしいのは会費の上乗せ分ではない
会費の差額だけを見れば、コストコに入るのは一人あたり年5,280円です。仮にその人が買い物をコストコに集めて年間の購入額が大きく増えれば、2%を返しても、店に残るものはずっと大きくなるはずです。
つまり、エグゼクティブ会員は「高い会費をもらうための制度」ではないのかもしれません。「よく買ってくれるお客様に、もっと買いたくなってもらう制度」なのです。
上位の会員ほど店を使い込み、使い込んだ人ほど翌年も上位の会員を続ける。この流れができれば、店にとってこれほど心強いお客様はいません。
他のお店でも使える
「高い会費を払った人ほど使いたくなる」しくみ
・飲食店
通常会員は無料のまま、年会費制のプレミアム会員を用意し、飲食額の一定割合を次回使える特典として返す。
・ゴルフ場
上位会員にプレー代だけでなく、レストランやショップの利用額にも特典を付け、施設の中での消費をまとめてもらう。
・スクールや教室
年間の上位会員制度を作り、講座やイベントへの参加額に応じた特典を付けて、複数のサービスを使ってもらう。
まとめ
この仕組みのポイントを整理すると、
・通常会員より高い会費を先に払ってもらい、「元を取りたい」という利用理由を作る
・2%還元で、「どうせ買うならコストコで」という判断を増やす
・ほかの店で買うことを、還元を逃す小さな損に感じさせる
・還元を一年単位で積み上げ、一年分の買い物と翌年の更新につなげる
・会費を払ったこと自体を、来店のきっかけにする
といった狙いが考えられます。高い会費で稼ぐのが目的ではありません。高い会費と2%還元を組み合わせて、「この店で買い物をまとめたほうが得」と思ってもらう。
そして、お客様一人ひとりが1年間に使う金額を増やしていく。それがこの販促の仕組みなのです。
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
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初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
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