「定年したら、のんびり好きなことをしたい」「仕事一筋で、趣味と呼べるものがない」「会社を離れたら、何をすればいいかわからない」。長年働いてきた人にとって、定年は大きな節目です。自由な時間が増える一方で、何をして過ごせばいいのか分からなくなってしまう人もいます。では、定年後にやることがなくなる人には、どんな共通点があるのでしょうか? ウェルビーイング研究の第一人者である前野隆司氏は著書『幸せの人類史 なぜ「幸福」は人類を「不幸」にしたのか』の中で、さまざまな分野の「達人」の研究をもとに、これからの時代の生き方について語っています。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

老後に「人生を楽しめなくなる人」の共通点・ワースト1Photo: Adobe Stock

時間はあるのに、やることがない

平日の昼間、何をして過ごせばいいか分からない。
仕事以外に、夢中になれるものが思い浮かばない。
何かを始めても、すぐに飽きてしまう。

こんなことに心当たりはないだろうか。
前野隆司氏は、書道や茶道、合気道、経営など、さまざまな分野の達人の研究をしている。
その達人たちには、ある共通点があるという。

私は書道や合気道や仏道の達人にお会いすることがありますが、彼らが口をそろえて言うのは、「私はまだまだ」です。
――『幸せの人類史 なぜ「幸福」は人類を「不幸」にしたのか』より

前野氏によれば、何かをとことん突き詰めて、自分を高めることに邁進すると、そこには際限がないという。道を極めた人ほど、自分はまだまだだと感じているのだ。

仕事がないと、突き詰めるものがない

定年後に「やることがなくなる人」の共通点・ワースト1。
それは、とことん突き詰めたいものを持っていないことだ。

仕事には、締め切りや目標がある。
そのため、定年で仕事がなくなると、やることも一緒になくなってしまう。
一方、自分で何かを突き詰めている人には、終わりがない。

ただし、ここでいう達人とは、特別な才能を持った人のことではない。

ここでいう達人とは、特定の分野で有名になる人のことではありません。自分の仕事や生活の中で、世界との関係を深めながら、自分らしい唯一のあり方を磨いていく人のことです。料理人でも、教師でも、農業者でも、研究者でも、あるいは家庭生活の中でも、人はそれぞれの場で達人の道を歩むことができるはずです。
――『幸せの人類史 なぜ「幸福」は人類を「不幸」にしたのか』より

暮らしの中で、小さな達人になろう

毎日の料理を、少しずつ工夫してみる。
昔やりたかった習い事を、一つ始めてみる。
仕事で培ったことを、地域や若い人のために生かしてみる。

そんなちょっとしたことが、終わりのない楽しみの入り口になるかもしれない。

「私はまだまだ」と思えるものがあれば、定年後の時間は、自分を高めていくための時間になる。
今から小さな道を一つ持っておくことが、定年後を豊かにする準備になるはずだ。