「収入は増えたのに、生活の満足感は変わらない」「欲しかったものを買っても、すぐに飽きてしまう」「もっとお金があれば幸せになれるはず」。お金は暮らしを支える大切なものですが、お金が増えるほど幸せになれるとは限りません。では、お金があっても幸せになれない人には、どんな特徴があるのでしょうか? ウェルビーイング研究の第一人者である前野隆司氏は著書『幸せの人類史 なぜ「幸福」は人類を「不幸」にしたのか』の中で、心理学の研究から明らかになった、幸せにつながるお金の使い方について語っています。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

お金があっても「幸せになれない人」のお金の使い方・ワースト1Photo: Adobe Stock

お金が増えても、満たされない人

給料が出るたびに、つい色々と買いすぎてしまう。
買い物をした直後は満足するが、すぐに次の物が欲しくなる。
お金は、まず自分のために使うものだと思っている。

こんなことに心当たりはないだろうか。

お金があれば、欲しいものが手に入り、暮らしは便利になる。
しかし、それがそのまま幸せにつながるとは限らない。
経済的な豊かさと幸福感が単純な比例関係にならないことは、「イースタリンのパラドックス」として知られている。

では、お金があっても幸せになれない人は、お金をどのように使っているのだろうか。

自分のためだけに使っていても、幸せになれない

そのヒントになるのが、本書で紹介されている心理学の研究だ。

利他行動そのものに焦点を当てた研究として広く知られているのが、エリザベス・ダンらによる一連の研究です。ダンらは、実験的に「自分のためにお金を使う群」と「他者のために使う群」を比較し、後者の方が一貫して幸福感が高まることを示しました。さらに重要なのは、この効果がカナダやアメリカといった個人主義社会だけでなく、開発途上国を含む複数文化で再現されている点です。
ここから見えてくるのは、利他性と幸福の関係が文化依存的な道徳ではなく、人間の基本的な心理メカニズムに根ざしている可能性です。

――『幸せの人類史 なぜ「幸福」は人類を「不幸」にしたのか』より

幸せになれないお金の使い方、それは、お金を自分のためだけに使うことだ。

本書によれば、金・モノ・地位といった「地位財」に偏りすぎず、周りの人を思いやれる人ほど幸せであることが、ウェルビーイングの研究からわかっているという。
しかも、地位財による幸せは長続きしない。
前野氏は、お金と幸せの関係をこう説明する。

人間の心は非線形です。
金銭的・物的な欠乏状態は不幸ですが、金銭的・物的に満たされてもさほど幸せにはならないのです。

――『幸せの人類史 なぜ「幸福」は人類を「不幸」にしたのか』より

自分のための買い物を重ねても満足がすぐに薄れてしまうのは、そのためだ。

誰かのために、少しだけお金を使ってみよう

幸せなお金の使い方の鍵、それは「誰のために使うか」が握っている。

家族や友人に、ちょっとした贈り物をしてみる。
いつもお世話になっている人に、お茶をごちそうする。
応援したい活動に、少しだけ寄付をしてみる。

大きな金額である必要はない。
大切なのは、その使い道が誰かの喜びにつながっているかどうかだ。

お金の使い道を、自分のためから誰かのためへ、少しだけ振り向けてみる。
それが、お金を幸せに変えるいちばんの近道なのかもしれない。