「何か困っていることは?」と聞いても、部下からは「特にありません」の一言。会話が続かず、結局いつも自分ばかり話している……。そんな悩みを抱える管理職は少なくありません。しかし、部下が本音を話さないのは、単にコミュニケーション能力が低いからではありません。実は、上司の何気ない「会話のクセ」が原因になっていることがあります。外資系企業と日本企業で人事責任者を務め『冷えた組織を熱くする リーダーの切り札』を上梓した南和気氏が解説します。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
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「何でも相談して」と言うのに、部下が話してくれない理由
「最近、仕事は順調?」
「はい、大丈夫です」
「何か困っていることはない?」
「特にありません」
せっかく1on1の時間を設けても、こんなやり取りで終わってしまうことはないでしょうか。
沈黙が続くのも気まずいので、上司はつい自分から話し始めます。
「最近、忙しそうだけど、スケジュール管理は大丈夫?」
「他部署との連携で困っているんじゃない?」
すると、部下は「大丈夫です」と答えるだけ。
結局、上司ばかりが話して面談が終わり、肝心の部下の本音はわからないままです。
実は、こうしたコミュニケーションのすれ違いには、上司が無意識にやっているNG行動があります。
それは、部下が黙った瞬間に、上司が答えを先回りしてしまうことです。
部下が黙るのは「考えているから」かもしれない
部下に質問を投げかけたあと、数秒間の沈黙が続くと、不安になる管理職は少なくありません。
「質問の仕方が悪かったかな?」
「何を考えているのかわからない」
「早く答えてほしい」
そんな気持ちから、つい質問を言い換えたり、自分の意見を付け加えたりしてしまいます。
しかし、部下は必ずしも答えに困っているわけではありません。
自分の考えを整理し、どう言葉にすればよいか、一生懸命に考えている可能性があります。
そこで上司が「つまり、こういうことだよね?」と先回りすれば、部下は自分で考えるのをやめ、上司の意見に合わせてしまうことがあるのです。
「はい、その通りです」
こうした返事が増えれば、上司は部下と意思疎通できたと感じるかもしれません。
しかし、部下が上司に同意していることと、本音を話していることは、まったく別なのです。
優秀な上司は「7秒間の沈黙」を恐れない
ここで役立つのが、「ウェイト・タイム」という対話の技術です。
質問を投げかけたあと、すぐに次の言葉を重ねず、相手が考える時間を確保する方法です。
例えば、部下に「今回の仕事で、一番難しかったのは何だった?」と聞いたとします。
部下が黙り込んでも、すぐに助け舟を出す必要はありません。
まずは5~10秒程度、相手の言葉を待ってみてください。
最初は、上司にとって長く感じるかもしれません。しかし、その数秒間が、部下にとっては自分の考えを言葉にするための大切な時間になります。
もちろん、すべての沈黙が前向きな思考を意味するわけではありません。相手が緊張している場合もあるでしょう。
大切なのは、「沈黙は悪いことだ」と決めつけて、上司が会話を埋めようとしないことです。
「でも」を「なるほど」に変えるだけでも会話は繋がる
もう一つ、部下とのコミュニケーションで意識してほしいのが、相手の言葉をどう受け止めるかです。
例えば、部下が「時間が足りなくて、確認ができませんでした」と話したとします。
そのとき、
「でも、それはスケジュール管理の問題じゃない?」
と返してしまうと、部下は自分の説明を否定されたように感じるかもしれません。
そこで役立つのが、「Power of And(順接の力)」という考え方です。
「でも」「しかし」といった逆接の言葉を使う前に、まず相手の話を受け止めます。
このように問いかければ、相手の説明を否定せずに、問題の原因を一緒に考えることができます。
重要なのは、部下の言い分を何でも認めることではありません。
まず受け止めてから、必要な質問や指摘につなげることです。
コツは「引き出しながら聞く」こと
私は、管理職に必要なのは、単に話を聞くことではなく、「引き出しながら聞く」技術だと考えています。
これは「アクティブ・リスニング」と呼ばれるもので、相手が自分の考えを言葉にできるように促す対話の方法です。
例えば、「順調?」と聞く代わりに「今、一番難しいと感じていることは何?」と尋ねる。
部下が答えたら、すぐにアドバイスせず、「そこに苦労していたんだね」と受け止める。
そして、相手が考えている間は、焦らずに待つ。
こうした小さな工夫が、対話の質を変えていきます。
管理職は、部下に何かを教えたり、正しい方向へ導いたりすることに意識が向きがちです。
しかし、部下とのコミュニケーションに必要なのは、いつも上司が正解を示すことではありません。
部下が自分の言葉で考え、本音を話せる状態をつくることです。
もし「部下とうまくコミュニケーションが取れない」と感じているなら、次の1on1では、質問したあとに7秒だけ待ってみてください。
その沈黙が、これまで聞けなかった部下の本音につながるかもしれません。





