「なぜ、この評価なのですか?」。部下からそう聞かれたとき、あなたはきちんと説明できるでしょうか。納得してもらおうとして、つい「会社の方針だから」と答えてしまう管理職もいるかもしれません。しかし、その何気ない一言が、部下の信頼を大きく損なうことがあります。外資系企業と日本企業で人事責任者を務め『冷えた組織を熱くする リーダーの切り札』を上梓した南和気氏が解説します。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
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説明責任を放棄していないか
「今回の評価ですが、個人の成果は十分に出ています。ただ、チーム全体の目標達成率が低いので、評価は少し厳しくなります」
評価面談で、上司からこう説明されたとします。
部下としては、当然疑問が湧くでしょう。
「自分の担当業務では目標を達成しています。なぜ、ほかのメンバーの結果まで評価に影響するのでしょうか?」
そのとき、上司がこう返したらどうでしょう。
「気持ちはわかるけど、会社の方針だから」
上司としては、会社の評価制度を説明しただけのつもりかもしれません。
しかし、部下からすると、「結局、上司は自分の評価に責任を持ってくれないんだな」と感じる可能性があります。
特に、上司の説明に納得できないまま「会社が決めたことだから」と話を終わらせられれば、それ以上意見を言う気もなくなるでしょう。
評価面談で部下の信頼を失うのは、低い評価をつけたときだけではありません。上司が説明責任を放棄したと感じさせたときなのです。
「会社のせい」にする上司が失っているもの
管理職は、会社と部下の間に立つ存在です。
会社の方針を実行しなければならない一方で、部下の努力や成果も正しく評価する必要があります。
その板挟みの中で、「会社の方針だから」という言葉を使いたくなる気持ちは理解できます。
しかし、この言葉を部下に対して安易に使うことには大きな問題があります。
なぜなら、上司自身の判断や意図が、部下にまったく伝わらなくなるからです。
例えば、将来のリーダー候補として期待している部下に、チーム全体の成果にも責任を持ってほしいと考えたとします。
その場合、本来伝えるべきなのは「会社が決めたから」ではありません。
「あなたには、個人の成果だけでなく、周囲を巻き込んでチーム全体の成果を高める役割も担ってほしい」
という、上司自身の期待です。
もちろん、実際に本人がどこまで影響を及ぼせるのか、評価指標は妥当なのかという点についても、説明し、意見を聞かなければなりません。
それを省略して「会社の方針だから」と言ってしまえば、部下は上司の期待も、評価の根拠も理解できないままです。
評価面談で守るべき「3つの鉄則」
では、部下が納得できる評価面談を行うには、どうすればよいのでしょうか。
私は、人事評価において3つの鉄則を意識することが重要だと考えています。
第一に、「事実のみを扱う」ことです。
「もっと主体的に頑張ってほしい」といった曖昧な言葉ではなく、事前に決めた目標に対して、何が達成でき、何が不足していたのかを具体的に説明します。
第二に、「他人と比較しない」ことです。
「あの人はもっと頑張っている」と比較しても、役割や状況が異なれば、部下は納得できません。あくまで本人の成果と評価基準に基づいて話すことが大切です。
第三に、「その場しのぎをしない」ことです。
たとえ本人の期待に沿わない評価を伝える場合でも、「上層部が決めたから」と責任を転嫁しないことです。
なぜその判断になったのか。どんな成果を評価し、今後どのような役割を期待しているのか。
管理職自身が、その背景を誠実に説明する必要があります。
「会社の方針」を「自分の言葉」に変える
例えば、チーム全体の成果を評価に含める場合なら、こう伝えてみてください。
さらに、
と続けるのです。
重要なのは、上司が一方的に期待を押しつけることではありません。
部下の立場や権限を踏まえ、評価の根拠を明確にし、納得できない点についても対話することです。
もちろん、管理職の裁量だけでは変更できない評価制度もあります。その場合も、変えられることと変えられないことを整理して、誠実に伝えることが必要です。
部下が求めているのは、必ずしも高い評価ではありません。自分の仕事を正しく見てもらい、その評価について責任を持って説明してくれる上司です。
次の評価面談で「会社の方針だから」と言いたくなったら、一度考えてみてください。
あなた自身は、その評価にどんな意味を見出しているでしょうか。
その答えを自分の言葉で伝えることが、部下との信頼関係を守る第一歩になるのです。





