

古川:そこに困っている人がいて、困っている人がいたら助けてあげたい。素晴らしいですね。現在はお金の使い方を分析するツールをつくられていますが、それは何がきっかけですか。自分自身のニーズですか。
閑歳:いくつか理由がありますが、コンシューマーサービスをやりたいと思っていました。アクセス解析をやっていて、それがBtoBだとしたら、BtoCにしたのが家計簿だろうと。
個人にとっての解析、むずかしいものをわかりやすくというコンセプトは変わっていません。普通の人が日常的に使うネットのサービスは何かと考えると、毎日使うものは以外と限られるのです。ただ、家計簿ならネットが好きでない人でも毎日接する可能性がある――そういうところに魅力を感じました。ITに比較的精通している自分とかけ離れた人が日常的に使うものをつくりたい。
社会人になってから4年くらい家計簿をつけていて、家計簿をつける人の気持ちがわかるということもあります。テーマは自分の人生に寄り添うものがいいと思っていました。例えばテーマが結婚ですと、すでに私は結婚しているので自分で使う機会があまりなく、使う人の気持がわかりづらくなっています。お金はずっと関係するし、自分が飽きなさそうなテーマ、ちょうどよい大きさだと感じました。
古川:お金と分析は形にしてしまったけれど、最近いろいろな発言を見ていると、子どもと教育にも興味ありそうですよね。
閑歳:少子化に興味があります。どうだったら自分が子どもを産みたくなるか、を考えたり。自分がパソコンを習いたいと思った時、周りに詳しい人がいなくて苦労したので、英才教育によって子どもの才能を最大限に伸ばしたらどうなるか、知りたいし、やってみたいなと思っています。
古川:過去一番へこんだことは何ですか。そこからどう這い上がったのでしょうか。
閑歳:同じ環境で3年くらい経つと、がむしゃらだった時期が過ぎて、いろいろ悩んだり、ささいなことでへこんだりするようになりがちです。ただ、「こうしたい」と思うと、不思議と運が向いてきます。自分自身がピボット(方向転換)すると、新しい話がやってくるというのが、3、4回続いています。何かを捨てて何かを得られる、覚悟を決めると何かやってくる――本当に運がいいと思います。
古川:このシリーズでインタビューさせていただいている人がみんな運がいいと言うのです。ただ、控えめに言うとそうなりますが、運をひきつける磁力を持っているのだと思います。人間臭い部分、お茶目の部分にひかれたり、ときには自分はここはよくできるけれど、ここは穴が空いていて、そこを補完してくれる人が現れる感じでしょうか。パズルのあいた場所を埋めるピースのように。
閑歳:本当にそうだと思います。
古川:3~5年先だと何をやっていますか。
閑歳:まずは今自分がやっていることを大きくしたいと思っています。それ以上の遠くの未来は正直、何をやっているのか想像もつきません。
古川:教育に関心があるから、まったく新しい教育メソッドを考えるとか。
閑歳:それもありますが、老年期になったら、教育のほかに高齢者向けの共同生活の場づくりもやってみたいと思います。私の周りには結婚していない人も多いですし、結婚していても、どちらかに先に死なれるかもしれません。結婚という形にこだわらなくても暮らしやすいものを何か作ったりできたらと考えています。
古川:シェアルーム、シェアハウスという考え方がありますね。都市をデザインする際に、情報の共有、利便性ばかりを追求して、コミュニティやコミュニケーションとかがないがしろにされている。お互いが助けられる、都市デザインが必要ではないかと考えています。
閑歳:年齢は共通で重ねていきますし、独身の人が多くなるので、よりリアリティが出てくると思います。