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スマートフォンの理想と現実

日本はキャッチアップできるか?
見えてきた通信と放送、サービス融合の近未来

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第51回】 2013年9月25日
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 これは、単に付加価値云々というレベルではなく、日常生活における映像コンテンツの位置づけや、それを担うビジネスの存在意義といった、「そもそも」の部分に直接影響を及ぼす、重大なテーマといえる。もちろんそれは、プライバシー等の重大な課題も孕んでいるが、そうした課題もすでに視野に入れたアプローチも、今回のIBCでは提示されていた。

 たとえば英国のBBCと連携する研究機関が、こうした検討に着手するなど、多くの事業者がこの領域に「本気」であり、様々な試みを進めていることが、これ以外にもいくつか確認できた。スマートテレビの普及と、スマートデバイスによるその多様化が、この領域を大きく盛り上げていることは、間違いないだろう。

 ただし、ビッグデータから本当にコンテンツビジネスの新たな価値を見いだせるかは、現状ではまだ分からないし、それゆえに当然ながらビジネスモデルも明らかになっていない。現状、唯一それに近づいているのはYoutubeくらいだが、そんな彼らとて結局は広告ビジネスの範疇を出ていないし、彼らもまた早晩有料サービスに着手すると言われている。

 映像コンテンツビジネスとビッグデータは、まだまだこれからのテーマであり、ビッグデータの具体的な利用方法や解析手法うんぬんよりも、映像コンテンツの視聴を含めた、より横断的な情報メディア利用に関する付加価値の計測方法を探ることが、むしろ現実的なアプローチなのかもしれない。

ビジネスモデルは過渡期

 放送および通信サービスの交点においては、大きな流れが起きつつあるものの、まだビジネスモデルができていない過渡期ではある。スマートデバイスで、視聴関連のデータがより詳細に把握できるというトレンドを、放送コンテンツ業界はすでに無視できないのが現状である。

 一方、日本の場合、テレビ産業の構造は、規制当局によって極めて堅牢にデザインされてきた。そのため率直に言って、自らの手でビジネスモデルを変革していく自由度が、乏しい状況にある。すなわち、通信技術の高度化が実現するより新しいビジネスモデルを、単純に追いかけていくやり方は、あまり現実性を持たない。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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