1つだけ確かなことは、じっとしていては、その偶然に出会う可能性さえ生まれないということです。また、同じような人生を歩んでいても、目をつぶっていては、耳をふさいでいては、心を閉ざしていては、素晴らしい偶然の出会いが今目の前にあるのに、それに気付くことすらできない。つまり、その人の生きるスタンスこそが、偶発性との遭遇の頻度や質を決めているのです。

 「計画された偶発性」とは、様々な人、もの、出来事との良き出会いに自分が気付け、沢山の出会いを呼び込め、自分の人生に結び付けて行けるような、そういう生き方をしようということです。だからこそ、偶然は必然なのであり、魔法でも何でもありません。

 クランボルツによると、そうした、良き偶発性を人生に呼び込むには、以下の5つが大切だとされます。それは、

 「好奇心」: 心に壁を作らず、自分の好奇心を広げていく
 「持続性」: すぐにはあきらめず、ある程度納得するまでやってみる
 「楽観性」: 意に沿わないことが起こったとしても、好機と考える
 「リスク・テイキング」: 失敗はするものだと考え、何かを失う可能性より、新しく得られるものがあると考える
 「柔軟性」: 状況変化に伴い、一度意思決定したことでも、変えても良いと考える

 つまりは、「自分の人生に積極的に関わろう」と行動する姿勢と、偶発性を前向きに見つけられる、オープンマインドを持つことを心がけなくてはならない、ということです。

 では、エルネストはどうしていたのでしょう。彼の行動を振り返ってみましょう。

 まず、彼は医者になるという目標に向けしっかり勉強をしていました。が、そのことに盲目的に取り組むのでなく、若き日に与えられた時間を使い、本の中でしか知らない南米の地をこの目で見ようという「好奇心」を大切にしました。また、「大好きな恋人を置いて旅にでると、もしかしたら彼女は待っていてくれないかも知れない」(結局そうなってしまう訳ですが)、という不安を抱きつつも、大学を休学し、恋人と離れるという「リスク」をとって、彼は、旅に出るという行動を起こします。

 旅の途中、喘息の症状が悪化したり、テントが吹き飛ばされたり、ポデローサ号が故障したりと、思わぬ事態が続きます。それでもあきらめず、何とか旅を「持続」させるエルネスト。旅の計画はどんどんと遅れていきますが、それでもよしとする「柔軟性」も持っています。

 とうとう動かなくなるポデローサ号を見ても、彼は「いいんだ、歩くほうが人々に出会えるよ」と、意に沿わないことも好機と考える「楽観性」を保っています。その言葉通り、修理を頼むための作戦をひねり出し、人々に助けられたり、叱られたり。バイクを鉄くずとして売ってからも、車の荷台に乗せてもらったり、泊まるところを世話してもらったりと、人との触れ合いのなかで様々な経験を重ねていくのです。