「反社」には敏感なはずだったのに
みずほ銀行の体たらくはなぜなのか

 みずほ銀行が、関連会社との提携ローンによる反社会的勢力に融資を実行し、それを知りながら2年以上放置してきた問題が波紋を呼んでいる。

 問題発覚当初、コンプライアンス担当役員までで報告が止まっていたとの説明が後から覆され、当時の経営トップも、さらに現在持ち株会社と銀行のトップを兼ねる佐藤康博氏も、この問題を「知り得る立場にあった」ことが明らかとなった。

 世間の注目は、佐藤氏の去就だろう。常識的に考えると、「反社向け融資」は重大問題なので、問題を知った時点で(今年3月の金融庁検査の際とされている)、責任関係の追求を徹底的に行っていたはずだから、コンプライアンス担当の役員で報告が止まっていた、という説明は意図的な虚偽によるものだろう。

 百歩の百倍くらい譲って、佐藤氏がこの問題を自分が知り得る立場だったことをごく最近知ったとすると、「反社向け融資」の問題を行内の責任関係をはっきりさせなくてもいい程度の問題として軽く考えていたことになる。

 どちらであったとしても、持ち株会社、銀行共に、彼がトップであり続けることは「ビジネス的に」非合理的だろう。

 本稿の主題と直接の関係はないが、本件で不可解であり、当面大いに注目すべきだと思うのは、本件に対する金融庁の対応だ。「コンプライアンス担当役員まで」という当初の説明を本気で信じていたのだとすると、検査としてはあまりにお粗末だし、本当の状況を理解、あるいは推測できていながら、みずほ銀行側と「落としどころ」について「握った」のであれば、金融庁にも重大なコンプライアンス問題があることになる。

 ドラマ『半沢直樹』で言うと、片岡愛之助氏が快演(怪演?)した黒崎検査官に当たる人物に注目が必要だ。

 他方で、想像をたくましくするなら、持ち株会社の役員会の資料として問題を記した書類が複数回提出されていたという、明らかで動かぬ「物証」があるのだから、無難な決着をよしとしない関係者がみずほ銀行内部にいたとすれば、「弾を撃つ」のは簡単だったろう。