SAPジャパンは2月6日、プレス向けに2014年のビジネス戦略を説明した。その中で、安斎富太郎社長は、就任以来の3年で事業構造の変革を推進してきた成果があらわれ、SAPジャパンの2013年の事業別売上構成では、非ERP事業が7割弱に達したと話した。その変革の推進役となっているのが、クラウド事業とインメモリ型データベース技術のHANAだ。また、4月に東京と大阪に同社独自のクラウド用データセンターを開設する計画も明らかにした。
クラウドの急成長を支える3つの要素
安斎社長はこの3年間に、「リーマンショック後の売上停滞からの回復」「非ERP事業の拡大による事業構造変革」「パートナーとの関係強化」を課題として取り組んできたと話し、いずれも確実な進展をしていると説明した。
「売上高は、過去3年間で年率20%成長と、グローバルの14%を超える大きな伸びを実現した。売上・利益ともに堅調。2013年に特に重視したのが事業構造の変革で、新たな成長基盤の下地をつくるために、13年4月に社長直轄事業として『クラウドファースト事業本部』を設立し、クラウドに大きく舵を切った」(安斎社長)
そのクラウド事業の売上高は、2013年に前年度比で400%増と急増、導入ユーザー数は、事業部設立時点に目標に掲げた100社を超えた。「実は、SAPはグローバルではクラウドの契約数は業界最大であり、オンプレミスからクラウドへの転換を至上命題として取り組んでいる。日本ではまだそうしたイメージが浸透していないだろうが、この1年のクラウド事業の伸びはグローバルでもリードするもの。2015年には、売り上げ構成比10%が全社的な目標で、日本でもその水準を実現したい」と安斎社長は意気込みをみせる。
なお、同社の財務区分では、例えばAWS(Amazon Web Services)などのクラウド上で、既存のライセンスを使ってERPを展開するBYOL(Bring Your Own License)などは、既存のビジネスモデルに当たり、クラウド事業の売上げには含まれていないという。
同社のクラウド事業を推進する部署として設立されたクラウドファースト事業本部を率いる馬場渉同事業本部長は、「シリコンバレーではもはやクラウド以外はITじゃないというような光景がある。この変化は、みなさんが想像されているようなスピード感ではなく、一気に日本にもくるだろう。CRMやマーケティングという一部の局所的なITだけでなく、調達、人事、研究開発などもクラウドで行われるようなる」と指摘。SAPジャパンでも、クラウドを通じてさまざまなビジネスプロセスをカバーしていくと強調した。
そうしたクラウド戦略で重視しているのが、パートナーとの協業だ。年初に発表された、NECへのOEMによる「SAP Business ByDesign」のグローバル協業体制は、「NEC様からは、同社の株価を上昇させたという評価をいただいた」(安斎社長)という。SAP Business ByDesignは、中規模拠点向けクラウドサービスで、会計、人事管理、営業、マーケティング、調達・購買、顧客管理、サプライチェーン管理などの分野を網羅したものだ。