偉大な2人の先達の名を冠した賞

マーク・ラスキーノ
ガートナー
バイス・
プレジデント 兼
ガートナー フェロー

 真の意味で独創的、かつ戦略的なITリーダーシップという考え方が見直されている。この1年間で私はそう実感しており、大いに胸を撫でおろしている。この考えは、10年以上にわたり抑えつけられていたため、半ばあきらめかけていたのだ。

 数週間前、光栄にもフィッシャー・ホッパー賞の授賞式で、ガートナーのリサーチとしての見解を述べる機会をいただいた。この賞は、マックス・ホッパー(アメリカン航空のコンピューター予約システムに端を発するSABREシステムの創始者)とドナルド・フィッシャー(米衣料品小売り大手ギャップの元CEOおよび共同創設者)が晩年に設立したものだ。2人が考える理想的なCIO(最高情報責任者)とは、コンピューターを駆使して組織最適化のための新しい手法を発見し、それを適用できるような独創的なリーダーだ。

 今年の受賞者は、小売り大手クローガーの社員だった。彼は受賞スピーチで、フェデックス勤務時代の経験と同社の創設者でありITの信奉者でもあったフレッド・スミスから多大な影響を受けたと、感謝の意を表した。

 21世紀初頭、フィッシャーとホッパーは、CIOは “御用聞き”のようなサービスプロバイダーと化しているのではと危惧していた。ITリーダーの役割とは、新しい標準的な業務パッケージの導入後、業務上の要求に延々と取り組み続けることだけではないと考えたのだ。そこで2人は、独自性のあるテクノロジーで、組織とITリーダーの役割に革新をもたらした偉大なCIOをたたえるべく生涯功労賞を設けた。

 興味深いことには、審査員には現役のCIOのみならず、第一線を退いた元CIOたちが名を連ねている。彼らは、ITで実現する斬新なビジネス手法は、持続可能な競争優位性を支えるものと理解している。私は、フィッシャーとホッパーがこの重要な賞を創設したことは正しかったと確信している。10年20年前のリーダーたちがメンターとなれば、現役世代は多くのことを彼らから学ぶことができる。

21世紀初頭のめまぐるしい潮目の変化

 2002年から2007年のリーマンショック前夜、多くのビジネスリーダーは、ITを戦略的に役に立たないものと見なしていた。ITは仰々しく、不安をあおり、過剰な期待を抱かせる半面、実現性に乏しかった。

 それに先立つ1998年から2001年の4年間、ビジネスリーダーは、2000年問題への対応にはじまり、CRM、ERP、サプライチェーンマネジメント、eコマース、コラボレーションなど目新しくパッケージされたITプロジェクトに、莫大な資金を投じた。しかし、大方は悪夢を見る羽目になった。