福祉、防災、首都機能移転…
候補者の考えは明確にならず

 福祉についてもそうだ。舛添氏をはじめとして多くの候補者が福祉とりわけ高齢者福祉の充実を公約に取り上げていた。その中で「世界一の福祉都市」を標榜する候補もいて、有権者の間で好感をもたれていたようだ。

 ただ、この点についてももっと議論を深めるべきだった。「世界一」をめざすというからには、まず東京都の福祉の現状をどう認識しているのか。現在の東京都の福祉は世界の主要都市の中でどのくらいの位置にあって、いまだ世界一になっていないのはどういう分野がどの程度劣っているからなのか。それをどういった施策でいつまでに克服しようとするのか。

 これらが明らかにされることによって、新しい福祉政策のイメージが湧き、それに対する都民の評価も定まってくるが、それには候補者同士の討論やマスコミを通じてのやりとりが欠かせない。ただ、仮にこうした機会があったとして、果たして候補者たちの説明はどうだったかはわからない。

 防災についていえば、首都直下型地震の到来が予想され、しかもそこで2020年にはオリンピックが開催されるのだから、これまで以上に防災に注力しなければならない。このことはどの候補者も理解していて、ここでも「世界一安全な都市」を唱える人がいたり、自らの危機管理の経験を強調する人がいたりした。

 防災に力を入れるかどうかは争点にならないのだが、少し観点を変えて筆者は候補者の考えを聞きたかった。それは、首都機能の移転をどう考えるかということである。大地震のリスクに備えて、国は首都機能を地方に移転させる方針を法律で定めている。東京への一極集中を避けるためである。ところが、法律制定後既に20年を経過したというのに、移転のための作業は一向に進んでいない。

 これにはサボタージュしている政府や国会に責任があることはもちろんだが、実は東京都にもその原因がある。石原知事の時代に東京都は首都機能移転に断固反対していたのである。他県の知事であれば、もっぱら自分の地域の発展を考えていればいいが、首都を預かる都知事は必ずしもそうではない。わが国全体のことを考え、身を削ってでも自らの地域の役割を軽減させる覚悟があっていい。この点について候補者たちはどう考えるのか。その答えを聞く機会もないままだったが、そもそも候補者たちがそのことに関心があったかどうかもわからない。