2月11日に初の議会証言に臨んだイエレン新FRB議長は、「安全運転」を心がけ、バーナンキ路線から外れない無難な発言を繰り返した。

 彼女は1月のインタビューで、今年の米経済の成長率は3%以上との明るい見通しを語っていた。その後、予想外に弱い経済指標が相次いだが、楽観的なスタンスを変えていない。「12月と1月の雇用統計には驚いた。雇用の創出ペースはわれわれの予想を下回った。しかし、われわれはその統計の意味を翻訳して結論を出すのに注意深くならなければならない」。

 12月以降、全米の多くの地域が厳しい寒波に断続的に見舞われている。1月の飛行機のキャンセル数は4万件で、過去最高だった2012年10月(ハリケーン・カトリーナが東海岸を襲った月)の2.1万件を大幅に上回った。南部のアトランタですら1月下旬に雪が降り、経済は麻痺状態となった。アトランタ連銀のロックハート総裁は2月5日に、これから出てくる経済指標は悪天候により弱くなるだろうと発言している。

 一時的な要因で経済指標が攪乱されている間に、経済のトレンドが実は変わっていた、というケースが過去になかったわけではない。しかしイエレンは天候要因が剥落すれば米経済は再び着実な成長経路に戻るとみている。しかも、3月のFOMCまで5週間もあるため、現時点で量的緩和第3弾(QE3)の縮小ペース変更を考える必要はないとのスタンスが示された。ただし、ゼロ金利解除は急がない予定でいる。新興国経済を心配する発言もあったが、「それはわれわれの責任ではない」というニュアンスが醸し出されていた。