日本で「トラス・ショック」再来も!?円安放置と国債膨張が招く深刻な経済危機の現実味Photo:picture alliance/gettyimages

米中関税合意で不確実性は一時緩和したが、米国経済の先行き不透明感は強い。日本は日銀の低金利政策による円安と生活コストの高騰、膨張する国債発行に直面し、適切な対応がなければ「トラス・ショック」のような深刻な経済危機の再来が現実味を帯びつつある。(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)

米中合意で不確実性は緩和も
利下げ時期は不透明感

 企業経営者にとって最大の悩みの種は不確実性である。スタンフォード大学のニック・ブルーム教授らが新聞記事から不確実性に関する用語を抽出し算出した「米国貿易政策不確実性指数」は、この4月にかつてないほど上昇した(図表1)。

 その点で、5月12日に米中両国が関税引き下げで合意したことはポジティブなニュースだった。この方向性が続けば、5月の同指数は改善しそうだ。

 金融市場に広がっていた米国経済の失速懸念も、ひとまず和らいでいる。フェデラルファンド先物市場で織り込まれたFRB(連邦準備制度理事会)の利下げ予想(1回0.25%幅)は、5月6日時点では年内3回以上が78%だったが、5月20日時点では33%に低下した。一方で、2回以内にとどまるという予想が67%へ増加している(CMEグループ資料より)。

 共和党議員の間では、来年11月に控える中間選挙への危機感が高まりつつあった。

 ドン・ベーコン下院議員は、1890年と1930年代に共和党主導で行われた関税引き上げは経済的に大失敗だったと指摘。そもそも昨年の大統領選でトランプが勝利したのは、有権者が移民や国境対策およびインフレ沈静化を期待してであり、関税政策への支持では全くないと批判した。

 また、ランド・ポール上院議員も、過去の関税引き上げ後の選挙では共和党議員が“大殺戮”に見舞われた(1890年は共和党の議席が半減)と警告している。

 そうした声も意識しつつ、トランプ政権には関税を緩和する方向で進んでもらいたいが、依然として不確実性は残っている。