何にでも「そうですね」だが、
何も決めない首相

 何にでも「そうですね」と言うが、自分では何も決めずにぐずぐずしている。近くにこんな人物がいたら「付き合えない!」と腹が立つことだろうが、日本人にとっては残念なことながら、まさにその人が総理大臣なのだ。内閣支持率の下落も当然だろう。『朝日新聞』(12月21日朝刊)の世論調査では鳩山内閣の支持率がついに50%を割り込んだ。安倍、福田、麻生の前任三人に続いて、総理大臣の価値を月単位で減価償却するような政権はもう勘弁願いたいところだが、現在、既視感のある展開から抜け出せていない。

 理由は、一重に鳩山由紀夫首相のパフォーマンスが冴えないことだ。鳩山氏は、「国民向けの顔」に不向きな小沢一郎氏に代わって、ソフトで爽やかな指導者を演じる必要があったのだが、台本が覚えられない役者のように、適切な台詞を言えずに立ち往生している。

 黙秘権を行使する容疑者のように自分から説明しない自らの政治資金問題、オバマ米大統領と会ってなお先送りを決め込む普天間基地移設問題、さらに新規国債「44兆円」の上限を巡る発言のブレと頼りないこと夥しいが、ここに来て、かのマニフェストの実行も怪しい雲行きになってきた。12月21日、鳩山首相は、厳しい財政事情を理由に、ガソリンの暫定税率を実質的に維持することを決めた。「マニフェストに沿えず、率直におわび申し上げなければならない」という、いかにも彼らしい台詞が添えられた。

 ここまで来ると、マニフェストを修正する「要望」を鳩山首相に提示した小沢一郎民主党幹事長の実質的な権力の大きさがいやでも注目の的になる。『毎日新聞』(12月22日朝刊)によると、21日に暫定税率引き下げを決めかけた鳩山首相に対して小沢氏が電話して「そんなんじゃダメだ」と強く迫ったのだという。