「昔取った杵柄病」「ライバルにとられたくない病」
子ども組織のさまざまな病状

 日本の会社組織はさまざまな病気に蝕まれています。拙著『「一体感」が会社を潰す 異質と一流を排除する<子ども病>の正体』では例として15ほどの症状を紹介し、「子ども病」という名前で総称しました。

 いくつか例を挙げると「仲間としか仕事をしない人たちの組織」、「全体最適よりも個別最適を優先する組織」、「一流が排除される組織」等々。実は紙幅の関係で15にとどめただけで、いろいろな症状の病気がたくさんあります。

 最近目立つ病気としては、たとえば「昔取った杵柄病」。これは過去に実績のある経営幹部が現場に介在し、時代遅れの戦術を「これが王道だ!」と強制し、現場の担当者を疲弊させて、成果も上がらない状況になっているという病気です。

 幹部自身が「経営とは何をすることか」が理解できていないので、ついつい自分が得意だと思い込み、愛着のある現場のことに口出しするのですが、彼らが成功していた時とは、時代の空気や事業環境も大きく異なっていることをまったく理解していません。

 結果としても連戦連敗となるのですが、その原因が自分にあるとも知らず、あいかわらず過去のやり方を「“正しく”行え!」と現場に介入を続けてきます。いわゆる“老害”ともいえますが、自分自身の役割の規定や行動に対する客観的な視点がなく、結果に対する検証もまったくできないという点で非常に幼稚といえます。

「ライバルにとられたくない病」という病気もあります。これはM&A市場に会社の売り物が出た際に、形式上は精査するものの自社の戦略とマッチしているかどうかをしっかりと検証することなく、ライバル企業にとられたくないというだけの理由で高いお金を払ってM&Aを行うケースです。

 場合によっては、買う会社が持つ技術も販路も自社ですでに持っていることだってあります。一見良さそうに見えるものが眼の前に流れてきたときに、他人にとられたくないというだけの理由で、現場が汗水たらして集めたお金をドーンと投資してしまうのですから、大人のやることとは到底思えません。

 こんな風に、子どもっぽい症状を示す様々な病気はいくらでもあります。