「人々が抱えている問題を解決する技術。大きなビジネス・チャンスは、これを開発するところにある」。
シリコンバレーの起業家志望者たちがうるさく聞かされるのが、この教えである。しばらく忘れていた台詞だが、そう言えばこんな問題がまだ残っていたと思わせるのが、シャザムという音楽サービスの会社である。
シャザムが解決するのは、実に古くて新しい問題だ。ラジオから聞こえてくる音楽やテレビのコマーシャルのバックで鳴っている音楽。そんな音楽が気に入って、「これは何の曲だろう?」と知りたくなることは誰にでもあるだろう。
シャザムのアプリケーションを携帯電話にダウンロードしておくと、そんな問題が簡単に解決する。音楽がプレイされている間に、携帯をスピーカーにかざすだけでいい。携帯のマイクロフォンから取り込まれたメロディーがシャザムに送られ、分析されて、数秒後には曲名、アーティスト名、アルバム名などが表示される。
日本でも携帯キャリアが同種のサービスを提供しているが、シャザムのアプリケーションは、クラブでかかっている音楽やレストランで流れている音楽など、多少の編曲が施されたものや騒音のある場所でも機能する。曲の的中率はかなり高く、アップルのアイフォン・アプリケーションで人気を呼び、現在は世界で5000万人以上のユーザーがいる。アイフォン・アップの音楽アプリケーションでは、必ずと言っていいほど上位にランクされている。
シャザムには、先頃シリコンバレーの超有名なベンチャーキャピタル会社、KPCB(クライナー・パーキンズ・コーフィールド&バイヤーズ)がラウンドDで投資に参加したことが明らかになり、同社は久々に登場した超有望インターネット企業として脚光を浴びている。
シャザムが創設されたのは2000年。実は本拠地はイギリスであり、KPCBがイギリスの企業に投資を行うのも初めてのことだ。それだけ成長株としての将来が期待されているということになる。