そこで鍵となるのが、マスク数や工程数の削減、ボトルネックとなる装置の部分的な増強などによる生産能力の捻出や、大型パネルから高単価の中小型シフトによる単位売上の増加である。ところが、前者には限界があり、後者も容易ではない。

 後者の具体例は亀山第2工場のIGZO比率、中小型パネル比率の上昇だが、IGZOは大口顧客であるアップルのiPad Air向けを失注し、iPad Mini(Retina版)もApple側の在庫調整のため、2月以降大幅な生産調整を余儀なくされている。現時点では高精細ネットブック向けや中国スマートフォン向けなどが主体であるが、数量は多くなく、月産3万シート近い生産能力を埋めるのは容易ではない状況である。

 IGZO以外(アモルファスシリコン)に関しても、タブレットPC、ネットブック向けの受注不足、同社のサポート要員不足もあり、受注は踊り場を迎えている。中小型パネルは基本的にカスタム製品であるため、顧客数や機種数が増えれば増えるほど、開発・設計やサポート人員が必要となるため、コストを抑制しながら売上を伸ばすのが本質的に難しい事業である。

最大の問題は 国内の液晶
太陽電池工場と関連人員の処遇

 この事態を打開するべく期待されるのが、提携先である中国の液晶パネルメーカー、南京パンダへの技術供与による収益確保である。南京パンダとの合弁で建設する第8世代工場は、同社の技術が移転され、中小型向けのIGZOパネルの一大生産拠点となる(15年第4四半期量産予定、生産能力は月産3万シート)。

 同社は技術移転料やロイヤルティ収入を得られるだけではなく、一定の生産能力も確保することになり、一石二鳥に見える。しかし、この時に問題となるのが、同社が国内に多数展開する工場や人員をどうするのかという点である。

 大半の工場は既に償却を終え比較的身軽な状態ではあるものの、設備投資や更新投資を行っていない工場は、徐々に競争力を失い、閉鎖を余儀なくされる可能性が高い。

 同社の財務状況からすると、資本集約的な液晶パネル事業を続けること自体が難しい状況であり、技術移転実施による技術の収益化、生産外部委託によるファブレス化は理にかなった展開である。しかし、問題はファブレス化に伴い発生する種々の費用を賄うのに十分な財務体力をまだ回復していないこと、国内におけるパネル生産縮小に伴い需要が減少する人員を再配置する有望事業が育っていないことである。

 この問題の解決の糸口が見えてくるまで、同社は思い切った措置を取りにくく、思い切った措置を取るまでは、本当の意味での業績底打ち、継続的な収益回復を期待するのは難しい。ここまで金融市場の期待を上回る業績回復、経営のかじ取りを行ってきた高橋社長と経営陣の手腕に期待したい。