スマホでTwilio経由のショートメッセージを受信した画面サンプル

「Twilio」という企業をご存じだろうか。といっても、一般の消費者がTwilioのサービスを直接利用することはない。コールセンターやECサイトなどで使う、電話やショートメッセージ(SMS)などの機能をWebサービスとして提供する企業である。米国サンフランシスコに拠点を置き、日本国内のサービスはKDDIウェブコミュニケーションズが提供する。

「音声通話API」と呼ばれるこのサービスが、いま注目を集めている。

 理由の1つは導入の手軽さだ。従来、企業が顧客窓口(コールセンター)を設置する場合は、専用の電話機やソフトウェアなどのシステム投資に莫大な金額がかかる。そのうえ、オペレーターの人件費が電話機の台数分だけ必要になり、一度作ったシステムの変更も容易でない。

 Twilioを使えば、Webで電話番号を購入し、その番号への電話やショートメッセージを送る数行のプログラムをサイトに設定すれば、それだけで自社のサービスに電話機能を加えることができる。

 そのうえ、利用料金が安い。電話番号は050で始まる番号が1つ月額108円(税込・以下同)、フリーダイヤルの0120で始まる番号は同1620円。あとは、電話やSMSの発生ごとに従量制の料金がかかるが、サービス導入の固定費、ランニングコストとも、従来の電話機能と比べて大きく抑えることができる。

顧客は電話をかけたがる

 だが、ネット全盛の今なぜ「電話」なのか。

 実は、ネットサービスを提供する企業のあいだで、電話の重要性が再認識されている。例えば、大阪で求人サイトを展開する「アグレワーク大阪」。このサイトで求人情報を見て応募しようとすると、氏名などを登録するフォームよりも上部に「電話で応募する」という文字と050で始まる電話番号が大きく表示される。この番号が、Twilioによって応募システムと連携している。

 この求人サイトでは、当初はWebのフォームだけだったところに、電話番号を加えたことで、応募件数は1.8倍に増えた。

 また、福岡市は大気汚染の測定結果を提供する市民サービス「PM2.5ダイヤル」を実験中だ。市内9ヵ所の観測点のPM2.5の測定値と予測情報を自動音声でアナウンスしてくれる。自分の住んでいる地域のダイヤルコードを押せば、電話をかけるだけで大気中のPM2.5の濃度を確認することができる。

 2013年12月からテストサービスを開始したが、3ヵ月間で5万着信を記録するなど、一部の市民の間では日課のように利用されているという。

 PM2.5の観測情報は、福岡市のWebサイトでも確認することができる。しかし、記者も試してみたが、スマホを操作してWebをチェックするより、電話番号を押すだけの方がはるかに簡単で早い。

 しかも、この仕組みの立ち上げには、市民の税金は一切かかっていない。音声を聞くと、最後に協賛企業のコマーシャルが流れるが、この広告費で開発費用を相殺した。Twilioの低コストが生かされた事例と言えるだろう。

 ほかにも、次のページのインタビューに出てくるように、フィールドサービスや顧客体験の向上のため、様々な業種の企業がTwilioのサービスを使い始めているのだ。