ネット通販の隆盛によって、リアル店舗がその売上を奪われるという“バッドニュース”が続々と報じられています。ネット通販の伸びは予想以上で、リアルがネットに食われたとの印象はぬぐえません。
主役はいつもユーザー。ユーザー行動の変化についてゆけなければ市場退出しか道はありません。今回のユーザー行動の変化をもたらしたのは、スマートフォンやソーシャルメディアの普及でしょう。こうしたツールを手にしたことによって、私たちはいつでもどこでも商品の口コミを見ることができ、友人の推薦に心を動かされ、価格を比較し、それらを踏まえたうえで商品を買うことができるようになりました。ネット店舗をとりまく商圏には、実店舗以上の、マーケティング情報があふれているのです。
最近特に話題になっているのが、「ショールーミング」と呼ばれる行動です。ショールーミングとは、店頭で実際の商品を見たり、試した後、価格比較サイトやECサイトで最も安価で販売している店舗を探し、購入する消費行動のこと。大手家電量販店などでは特にこの脅威が増しており、リアル店舗は今やショールーム化してしまい、その結果として、小売店のマージンが落ちています。
しかし私は、このユーザー行動の変化を、「ネット店舗vs.リアル店舗」というような、両者が争い、売上を奪い合う構造で捉えるべきではない、と考えています。また、顧客の視点からみても、ひいては企業にとっても、ネット店舗とリアル店舗の並存は悪いことばかりではないはずです。
ネット業界では、オンラインの割引クーポンを出してリアル店舗に誘導する、というような、ネット上からネット外の行動を促す「O2O(オンラインtoオフライン)」が、ここ数年、話題になっています。また、オンラインでの顧客行動の分析・ビッグデータの分析から、的確な顧客情報を導き出し、オフラインのリアル店舗でのより良い接客につなげる企業も登場しています。この「O2O」の考え方は、小売業に新しい流れが生まれる出発点、ヒントと考えていいと思います。
リアル店舗のある企業ほど有利?
重要なのは「顧客との接点」
オンラインとオフラインの融合というと難しく感じるかもしれませんが、ユーザーの1日の行動を中心に考えれば、自ずと戦略のヒントが見えてきます。例えば、朝起きてから電車に乗って会社に行き、仕事や食事をし、そして帰宅するまでにどんな行動を取るのか、そして、どこでどのような情報を取得しようとするのか。また、どんなリコメンドがどのタイミングであると反応してくれるのか。データを基に架空のユーザーを設定し、ユーザーが満足するように、商品やサービスを設計するマーケティング手法のペルソナを数多く立てながら、ユーザーのPCやスマートフォン、店舗との接点を想定しながら考えていきます。