――ソニーがいくら調子が悪くなってきているとはいえ、ソニーの信用力や資金力、ネットワークを使えば、大きな投資ができたり、大胆な選択もできたかもしれないですよね。

 うーん……、結果論としては、今の方が良かったと思いますが……。もしソニーの中にいたら、ポリティカルなことに時間を取られて、今のようにはなっていないと思います。

 5年前、斎藤さん(斎藤端・執行役EVP)が「好きなものをもって、外に出ていけ」と叱咤激励してくれて、出してくれた。ソニーはいっさい出資しない、でもその代わり好きなものを持っていけ、と。特許の買い取りについては、当時の知財担当の役員は木村さん(木村敬治、執行役EVP、CTOを勤め13年6月退任)だったんですが、「使わない特許は使いたい人に出してあげればいい」という考え方で、ソニーの知財部門の方々が一緒になって精査してくれて、サポートしてくれた。

 それから、創業当初は人的なサポートもしてくれました。広報部門も、モフィリアがメディアに取り上げられるように、応援してくれた。

 本当にソニーには感謝しています。見えるところ、見えないところ、いろいろな部署の人が背中を押してくれて、気持ちよく、爽やかに崖から落としてくれました(笑)。おかげで、今はソニーと関係ないので好き勝手やれています(笑)。いやいや、もちろん今でもソニーの方とはインフォーマルにコミュニケーションしていますよ。

喜びと悲しみのダイナミックレンジが
ソニーにいたころとはまったく違う

――さきほどお話に出たトルコの案件はどのくらいの規模になりそうですか。

 トルコの案件は世界初の、国家レベルで医療機関に静脈認証システムを導入して、患者さんの特定をするということです。断片的にやっている私立の病院はあるんですが、国全体でやるというのは世界初です。最初の例に参画できるのは、当社としてはとても大きな意味があります。

 しかも、このプロジェクトは3年続きます。その間、だんだんと需要が増えてくるかと思います。そうすると、当社のシェアも増やせると考えています。3年間の当社のビジネスの大きな柱になることは間違いありません。

――ブレークイーブンも近いと聞いています。利益が出るようになれば、先々のIPOもお考えなのでしょうか。

 この技術が世間で認められれば、IPOの前に買収されてしまうかもしれませんね。実際に、海外含めていろいろな話があります。ジョイントベンチャー作ろうとか。でもすべて断っています。

 この技術は日本企業が技術を持っています。まずは、チームジャパンで貢献していきたい。それが先でしょうね。2020年の東京オリンピックで使ってほしいと思っています。簡単に本人識別ができるので、何重ものチェックが必要ない、短時間でのセキュリティシステムができます。これは究極の「おもてなし」ですよ。