そして2011年2月。山形県は最上小国川流域の治水対策として「穴あきダム」が最良との結論を下した。ダム案(県の試算では約132億円)が河道改修案(約158億円)や放水路案(約164億円)などと比べ最も安く、環境への影響も少なく治水対策として最良であるとした。

 こうして2011年6月に、最上小国川ダム事業の継続が正式決定し、県に残されたハードルはただ1つとなった。漁業権を持つ小国川漁協の同意である。そのためには漁協を協議の場に引っ張り出さねばならない。有効な策はないかと県が思案を重ねたのは、想像に難くない。あらゆる策を講じて何としてもとなったはずだ。

 2012年12月に二度目の政権交代がなされ、国土強靭化が最重要施策に浮上した。アベノミクスによる財政出動も加わり、防災・減災への税金投入が広がった。

 最上小国川ダムの本体工事着工を目指す山形県にとって、ポイントとなる時期が迫りつつあった。それは、小国川漁協を含む県内17漁協の漁業権の更新である。漁業権は知事によって各地域の漁協に認可され、期間は10年。その漁業権が2013年末で切れることになっていた。知事は漁協から免許の更新申請を受けた場合、内水面漁場管理委員会に適格性を諮問し、その答申を経て交付することになっている。

 山形県は2013年12月17日の県議会農林水産常任委員会の場で、衝撃的な答弁をした。小国川漁協だけ漁業権の更新が認められないこともあり得ると示唆したのである。この発言が翌日の地元紙に大きく報じられ、漁業権の更新問題が初めて表面化した。

漁業権の更新不許可をちらつかせ
行政が漁協にダム建設を無理強い?

 実は、小国川漁協の沼沢組合長らは、12月の初め頃から厳しい立場に追い込まれていた。漁業権の更新をめぐり、県農林水産部幹部から執拗に責め立てられていたのである。漁業権の更新には漁協側が「公益上の配慮」をすることが不可欠で、その「担保」を示してくれと迫られていた。

「担保」とは具体的に何かと問い返しても、県農林水産部幹部は「それはご自分たちで考えてください」と突き放し、漁協側が「ダムを承認しろということか」と質問すると、「そんなことはひとことも言っていません」と煙に巻いたという。

 県幹部は穏やかな口調で、ダム事業に協力しなければ漁業権を剥奪すると、事実上漁協側を脅迫していたのである。もちろん、ダム反対を理由に漁業権の更新が認められないことなど法的にあり得ないし、許されない。