「30歳までがんばってダメだったら、
きっぱり諦めよう」

 例えば僕の場合、大卒で入った会社の松下電器産業(現在のパナソニック)を3年で辞めて、漫画家の道を目指しました。

 漫画家になれる人なんて、万に1人、十万人に1人、いえ、百万人に1人の世界でしょう。そんな世界を夢見て、せっかく入った大企業を辞めるなんて、それこそとんでもない決断です。普通に考えれば、無謀な選択以外の何物でもないでしょう。

 しかし、僕だって若いなりに夢に期限をつけていました。会社を辞めたのが25歳だったので、「30歳までに自分の作品が印刷され、出版されなければきっぱりやめよう」とはっきり決めていたのです。

 たまたま、最初に応募した作品『風薫る』が入選して、『ビックコミック』に掲載されることになりました。今から40年前の、1974年のことです。包み隠さずに言えば、才能があったのかもしれないし、運も相当良かったのでしょう。

 だから結果として「夢の期限」が訪れる前に、1つの夢を叶えてしまったわけです。とはいえ、夢に期限をつけることはとても大事だと、今でも思っています。