NTTドコモが発表した2020年ビジョン「HEART」は、“スマートイノベーションへの挑戦”と題される。2010年ビジョンであり、この連載の第1回で紹介したMAGICに比較すれば、さらにヒューマンな要素を重視している。
この世界は、実は前回紹介した第5世代のモバイル環境がなければ実現できない世界なのだ。その夢を見るのはもちろんNTTドコモだけではない。世界中で、そうした世の中の実現を夢見て、さまざまな技術開発が行われている。
仮想現実の極致とも言える
ライブコミュニケーションシステム
HEARTはHarmonize、Evolve、Advance、Relate、Trustの略だ。サービス・ネットワークの進化、サービスの融合による産業の発展もさることながら、国・地域・世代を超えた豊かな社会への貢献、つながりによる喜びの創出、安心・安全で心地よい暮らしの支援を強調する。競争ではなく共創の世の中を作ると考えるとわかりやすいと思う。
さて、そのHEARTを具現化した2020年ビジョンの映像「CULTURE SYMPHONY」をご覧になっただろうか。
そこで展開されるのは、華やかな未来都市の風景でも、成長する大都市や産業のイメージでもない。かつてインドのママ・グプタの下でホームステイをしたことのある世界中の5人の若者とママ・グプタの心の交流を描いた物語だ。離れていても、心を通わすことができる、モバイルはそのためのツールになるという宣言だ。
その映像の中に、慣れ親しんだ携帯電話機(スマートフォンやフィーチャーフォン)は登場しない。Google Glassのようなメガネやカチューシャ、あるいはコンタクトレンズなどの網膜投射型3Dディスプレイ。アクセサリーやキーホルダーなどの形になったカメラ端末からなるライブコミュニケーションシステムが主流だ。
それにより、あたかも隣に通話の相手がいるように、あるいはその人の部屋や、夜の砂漠など、その人がいる場所に招かれたようなライブ感の中で会話ができる。同時通訳機能もサービスされるので、海外の友人ともストレスなく会話を楽しむことができる。