気がつけば、バルセロナのモバイルワールドコングレスが近づく、もう2月。
実はこれが年始最初の連載更新である。またぞろ遅れたことをお詫びしたい。コンシューマエレクトロニクスショー(以下CES)の報告を書こうと思っていたのだが、私事で恐縮ながら、年始に腰痛を患い、現地には飛べなかった。
そんなわけで、弊社のスタッフを含め、現地に飛んだ方々からの話を聞くにとどまっていたのだが、そうして遠くから見ていて気づいたことがいくつかあった。今後の重要なトレンドになるとも感じているので、その備忘録から連載再開としたい。
パソコンの終わりの始まり?
CESはもともと家電製品の展示会なので、テレビやオーディオ等のAV機器が長年主役であった。現在はモバイルガジェット等の展示も多く、今回もいくつかワールドプレミアが発表されたが、CESにITを大々的に持ち込んだのは、やはりパソコンだろう。
そのパソコンの変化が、今年のCESの様子から、感じ取れた。特に印象的だったのは、東芝が発表したクロームブック(Chromebook)。グーグルが開発したChromeOS搭載のノートPCで、今回CESで発売し、300ドル前後という市場投入価格とあわせて、注目を集めた。
それだけをかいつまむと、よくある低価格化路線に見える。しかし今回クロームブックを手がけたのは、現在まで続くダイナブックというノートPCのパイオニア的ブランドを持つ、東芝である。
なにしろ、現在のノートPCの基礎的なデザインは、東芝が作ったといっても過言ではない。もちろんコンセプトの由来をたどれば、そもそもダイナブックという名前を授けたアラン・ケイに源流があるのだが、それをコンシューマ向けの製品としてパッケージングし、世に送り出したのは、紛れもなく東芝である。それらの経緯を総合して、スマートフォンにおけるアップルと同じような存在とも言えるだろう。
その東芝が、パソコンをパソコンたらしめた「ウィンテル」、すなわちインテルとマイクロソフトが作ったプラットフォームを捨て、グーグルが作ったクロームOSのプロダクトをリリースするというのは、歴史の転換点といっても過言ではない。
ただ、これは必ずしもパソコンの明るい未来を表すものでもない、と私には思えた。