錦織効果で加入問い合わせが
前年同期比20倍に跳ね上がる
グランドスラムと呼ばれるテニスの四大大会の一つ、全米オープンで日本人初の準優勝に輝く歴史的快挙を成し遂げた、錦織 圭選手の活躍が日本中を熱くしました。
本人が大会で使用したポロシャツやラケットなどの「錦織モデル」の人気は急上昇し売り切れ状態になるなど、その経済効果は300億円にもおよぶといわれていますが、中でも全米オープンを独占生中継した有料衛星放送局・WOWOW(ワウワウ)には、“錦織効果”の波がダイレクトに訪れました。
特に、決勝戦前夜の9月8日夜から9日朝(日本時間)にかけて、錦織選手の活躍をリアルタイムで見たいという人の新規加入申し込みが集中。同社では、部門に関係なく手の空いた社員が総出で徹夜の対応に当たるほどの反響だったそうです。
まだ残暑も厳しい9月の夜、WOWOWでは何が起こっていたのか。同社メディア戦略部でリーダーを務める鈴木 聡氏と、広報部の豊島 豊氏に話を聞くことができました。
まず、WOWOWにとっての一番の錦織効果は、何といっても加入問い合わせ件数の急増でしょう。豊島氏によれば、カレンダーが9月に変わり、錦織選手がベスト8に残ったあたりから問い合わせ件数が徐々に増えて、準決勝でジョコビッチに勝ち、決勝に進むことが決まってから、問い合わせ件数が前年の同時期と比べて約20倍に跳ね上がったといいます。
しかし、新聞や地上波のニュースだけで、WOWOWに加入してまで試合を見たいという人はそう極端に増えるものではありません。そこには、同社が地道に行ってきたWeb戦略が効を奏したことが背景にあったようです。
鈴木氏によれば、「Tennis Magazine」と共同運営するテニス情報サイト「THE TENNIS DAILY」(テニスデイリー)に錦織選手の最新情報を配信したり、自社で運営する動画サイト「W流」で同選手の活躍を短い動画にして上げるなど、頻繁にコンテンツの更新を行っていたところ、「テニスデイリー」の記事がヤフーニュースに掲載されたり、その記事から「W流」の動画にリンクが張られたりして、同社のサイトは、錦織選手の活躍と並行してアクセスが集中する状態になったそうです。
例えば、「W流」では、9月4日に行われた「バブリンカ戦」の動画は22万回再生されたといいます。これは、試合直後にハイライト動画を誰でも見られる場所に上げ、WOWOWが持つコンテンツの一部を誰でもフリーで見られるようにしていたことなどが影響していたようです。