東京駅八重洲口側に広がる飲み屋街の一角に、今年で創業70周年を迎えた、日本酒中心の老舗酒場、「ふくべ」があります。
現在の建物は、昭和39年に改装したもので、ヒノキの1枚板のカウンターも、そのときに新調したもの。来る日も来る日もお客の肘で磨かれ続けて、実にいい雰囲気を醸し出しています。
「カンナをかければ、真っ白になるんだけどね。今の風合いを大切にしたいんですよ」
と話してくれるのは、カウンター内でお燗番をする2代目店主(創業者の三男)。
その壁には、日本各地の日本酒が、一升瓶でずらりと並べられているほか、カウンターの奥には「菊正宗」の四斗樽がでんと据えられていて、注文すると升できっちりと1合を量って徳利に入れてくれます。値段も、銘柄によって525~630円とリーズナブル。
私もさっそく「菊正宗」の樽酒(1合577円)を燗でいただいて、つまみには、クサヤ(577円)を注文します。
お通し(サービス)の昆布の佃煮をつつきながら待つことしばし。炙りたてのクサヤが登場です。
東京に出てきた当初は、「いやな臭いだなあ」と思っていたクサヤ。しかし、その旨さを知るにつれ、クサヤを焼く香りが漂ってきただけで、「私もお願いします」と、ついつい便乗注文してしまうほどの好物になりました。
生のアジを焼いたものと、アジの干物を焼いたものとでは、干物のほうが旨みが強いのと同じように、クサヤになると、その干物よりもさらに旨みが増します。
噛みしめれば噛みしめるほどに、口の中にジワッと広がるクサヤの奥深い旨み。この一切れで、お酒がどんどん進んでしまうのです。
メニューに並ぶつまみは、ぬたや、玉子焼き、塩辛、たたみいわし、マグロぶつ、しめ鯖、イカ納豆、冷奴、お新香など、日本酒にぴたりと合うものばかり。今の時期、サンマの塩焼きなどもあるほか、名物のおでん(682円)もおいしい季節になりました。
「菊正宗」樽酒(577円)をもう1本おかわりして、1時間ほどの滞在は1730円。どうもごちそうさま。
東京駅まで歩いて数分というのも、またうれしいではありませんか。
期待が膨らむ「全国有名特選酒専門 通人の酒席」の看板 | 食べやすいように小さく割いて出されるクサヤ。これだけで2合、3合はすぐに飲める。 | じっくりとお燗をつけてくれる2代目店主 |
【お店情報】
店名: 通人の酒席「ふくべ」
電話: 03-3271-6065
住所: 中央区八重洲1-4-5
営業: 16:30-22:15LO(土は -21:15LO)、日祝・第2土休