カタログの文字が小さすぎて読みづらい、地図や路線図を確認しようとしても表示が見えなくて、眼から離したり近づけたり……。「ついに自分も老眼世代に仲間入りか」と観念しつつも、その一方で「老眼鏡を作るにはちょっと抵抗がある」という方もいらっしゃるのではないだろうか。そんなプレ・プチ老眼世代にとってちょっと気になるニュースをご紹介しよう。
使用イメージは、こんな感じ。ライト機能がついているため、少々暗いところでも、文字が判別できる。 |
三省堂書店が3月19日より、携帯電話がルーペになる携帯電話向けアプリケーション「めがね虫」の販売を開始した。急速に進化する携帯電話の液晶画面とカメラ機能を利用したもので、アプリをダウンロードし、文字の上にかざすと、文字を画像として撮影し、液晶画面に拡大して表示する。いわば、携帯電話を利用した「デジタル虫めがね」だと考えればいいだろう。対応機種は、au向け携帯電話 カメラ機能搭載 BREW(R)アプリVer3.0以上。利用料金は月額53円(税込)。
いまや、老眼に悩まされている世代も含め、携帯電話は外出の際の必携品。とくに、「老眼ビギナー」にとっては、意を決して作る老眼鏡やルーペより馴染みがあるツールであるのは間違いない。携帯電話は、ほとんどどんなシーンでもバッグやポケットに入っているし、ルーペを取り出すより携帯電話をかざす方が多少は見栄えがいいことも確かだ。このアプリを「ダウンロードしておいてよかった」と思うシーンも少なからず出てくるだろう。
さて、ここでちょっと気になるのは、「めがね虫」が書店から発売されること。
大手書店のレジ前などに貸し出し用の老眼鏡を置いてあることからわかるように、プレ・プチを含め老眼世代は書店にとって重要な顧客層だ。そのため、書店からこうした発想が出てくるのは十分に合点がいく。だが、一方で、「書店と携帯電話」というのは、けっして相性がいいとはいえない。言うまでもなく、立ち読み時に書籍や雑誌の一部を撮影するのはNG。店内で携帯電話を使う顧客は、書店側にとっては、「要注意」の存在だろう。
この点については、三省堂書店は、「このアプリには撮影機能がついていないため、書店の店頭でも利用可能」と発表しているが、同店以外の書店でも堂々のこのアプリを使えるかどうかが少々気になる。普及させるには、業界内でなんらかのコンセンサスが必要かもしれない。
それにしても、書店のような「デジタル関連業界以外」発の携帯アプリの登場は、携帯電話の機能拡充が限られた業界・企業によってのみ担われるものではないことを示しているように思える。モデルとしてはかなり異なるが、さまざまな開発者が自作したアプリケーションをiPhoneを通じて公開できる「APP STORE」の膨張ぶりも、その表れだ。
もちろん、「めがね虫」の店頭使用にまつわる課題が示すように、さまざまな発想に基づいて作られた携帯アプリが定着するにはハードルも多いだろう。だが、少なくとも携帯電話の未来を拓く「発想のシーズ=種」は、どこにでも転がっているのは確か。ここはひとつ、あなたも……。
(梅村千恵)