お祭りのウチワと歌謡ショーツアー。法務大臣と経済産業大臣の首が飛んだ。労働者派遣法やカジノ推進法など、気がかりな法案が掛かっている臨時国会は荒れ模様という。「配ったウチワは有価物か?」「ずさんな会計処理は誰が?」。どうでもいい政治家のお粗末。多くの有権者に関心外のことで、国政が右往左往するのは、いい加減にしてほしい。「国民の前で議論することは他にあるだろ!」。

 そう思いながらも、今起きていることは日本の政治風土を映し出す鏡なのだ。こうやって選ばれてきた政治家が返す当てのない「国家の借金」を生んだ。家計を破壊する増税か、見送って財政破綻に突き進むか――。選びようのない選択も、こんな政治風土になじんだ有権者の自業自得なのだろうか。

「お姫様」のために腹を切る

 私が驚いたのは、群馬県中之条町の折田謙一郎町長が突然、辞任したことだ。新聞報道によると「私が会計をチェックし、報告書を作成し、提出した。すべての責任は私にある」と言って辞表を出し、所在が分からなくなった、という。折田氏は故・小渕恵三首相の秘書で優子議員にも仕えて30年以上、小渕家に出入りし、08年に辞めて中之条町長に無当選で就任した。

 政治を家業とする小渕家にとって、地元で汗をかく折田氏のような人物は必要だ。長年の働きに報い一国一城を任された。家来が「お姫様」に傷を負わす結果となり、腹を切る。戦国の時代劇みたいなシーンを平成の世で見るとは思ってもいなかった。新憲法や地方自治の精神など、ここではどうなっているのだろう。

 町長は町民の代表だ。責任を取る相手は町民だろう。ところが眼は主君たる小渕家に向き、小渕家に対し責任を取り、町民を放り出した。こんなことでは町政も小渕家ために行われていたのではないか。

 町政を放りだした町長を中之条町の人たちはどう思っているのだろうか。優子さんは折田町長を諌めたのだろうか。

 町長が政治団体の実質的な会計責任者というのも信じがたいことだ。秘書を辞めても帳簿を抱え込んでいた。よほどの理由があったのだろう。長期にわたり会計を握っていれば何が起こるか。そうした常識を優子さんは持っていなかった。気がかりだったが言えなかったのか。どっちにしても失格だ。