小さなベクトル合わせを
何度も繰り返す

 人事に連絡をしてくる人の99%は、上司に対する不平や待遇への不満など、何かしらネガティブな感情を持っています。その人たちの話を聞くわけですが、私は、彼らに対し、「君、会社の問題がわかっているじゃないか」と褒めたうえで、「このまま文句を言い続けるか、それとも、俺と一緒に解決するか?」と聞く。

 すると、ほとんどの人は、「解決します」といいます。自分で一歩踏み出そうという気になるのです。

 後はアドバイスをしたり、必要に応じて上司との間に入ったりしますが、そうしているうちに、マイナスの方向に向いていたベクトルは、プラスのほうに向く。こうしたことを繰り返していくことで、会社全体のベクトルが統一されていきます。

 不平不満を表現できる人は、マイナスの方向であれ、エネルギーを持った人であり、相談してくるだけいいのです。

 より問題なのは、不平不満を表に出さず、自分の中に抱え込んでしまっている人たちです。

 そういう人たちに相談しようと思わせるためには、 “自分のところに相談に来てくれたらうれしい”というメッセージを常に発信することが大切です。

行列のできる人事屋

 ですから私は「行列ができる人事屋」になろうと、「何か悩みごとがあれば、私のところに相談に来てください」と常に、従業員に対して伝えています。そして、相談に来た人には、「来てくれてありがとう」と、どんなに忙しくても時間を取って対応します。

 しかし、それでも自ら副社長や人事に会いに行くのは気が引けるという人もいるでしょう。そういう人たちのために、こちらから人が集まっているところに積極的に出かけて行ったり、イベントを行ったりして、話をするきっかけをつくっています。

 例えば、従業員の家族参観イベントでスピーチをしたりもします。

 集まった従業員の子どもたちに対し、いかにLIXILがすごい会社になろうとしているかを説明し、「君たちのお父さんやお母さんは、この会社を世界一にするために、本当にいい仕事をしてくれているんだよ」と伝えます。

 すると翌日、「子どもが初めて“お父さんってすごいんだね”と言ってくれました」といった内容のメールが、必ず何通か届きます。

 私がかけた言葉で誰かが元気に、前向きになってくれて、その結果、組織の生産性が上がれば、本人にとっても、会社にとっても嬉しいことです。

 もちろん、こうした働きかけが全員に伝わるわけではありません。100回行ったとして、思いが伝わるのは1回か2回、1人か2人かもしれません。しかし、少なくとも思いを受け取った人は前向きになっていきます。

 こういう小さい変化を、あらゆるところで起こしていくのが、人事の役割なのです。