外国人の採用など、多くの企業が人事のグローバル化を迫られている。従来型の制度設計では齟齬を生じる場面も多いだろう。では、どのように考え、何を変えればいいのだろうか。筆者はGE、グーグルで採用と育成に携わった。その経験をベースに、一般的な外資系企業ではどんな人材マネジメント(標準的な型)が行われており、その人材マネジメントはどのような前提やフレームワークをベースに行われているのかを考察する。

企業の人材マネジメントが
「見える化」され始めた

 最近、インターネットの力によって今までブラックボックス化していた企業の内部が「見える化」されてきています。

 たとえば、インターネットが日本より5年~10年進んでいると言われる米国では、SNSのLinkedIn(ビジネス型SNS-現実的には誰でも検索可能な世界最大の人材データベース)やGlassdoor(企業の評判や人材マネジメントなどを社員や元社員が評価するサイト)によって、どのような学歴・職歴を持った人材を企業が雇用し、その企業がどのような人材マネジメント(待遇、教育、評価など)を行っているかに関する情報が「見える化」されています。

 これまでは、その企業で働いている人、もしくは働いた経験のある人に聞くことでしか知りえなかった会社の実情がつまびらかになってきているのです。

 LinkedInは全世界で3億人以上のユーザーを持ち、アメリカ人の約2人に1人はLinkedInに登録しているのが現状です。

 つまり、外資系企業では、ビジネス型のSNSを意識せずに人材マネジメントを行うことがとても難しくなってきているのです。

 中途採用があまり一般的ではない日本企業の人事担当者にはまだ実感はないかもしれませんが、日本でもGlassdoorの日本版とも言える企業口コミサイトVokersなどが急速にユーザーを増やしており、就職・転職希望者は職場を探す際に自分が希望する企業の情報や面接官のプロフィールをVokersやLinkedInで調べてから、応募するのが一般的になりつつあります。企業にとっては、内部情報を隠したくても隠せない時代と言えるかもしれません。

 このトレンドがさらに進めば、優秀な人材を採用し、働き甲斐がある環境を整えている企業には、優秀な人材が集まり、人材を使い捨てるような人材マネジメントを行っている企業(いわゆるブラック企業)は今以上に人材の獲得・維持に苦労するようになることは容易に想像できます。

 日本の労働市場の流動化がどこまで進むかは分かりませんが、現在グローバルで競争している、もしくは、今後競争することを目指す日本企業は、自社の人材マネジメントは候補者・潜在的候補者に「見える化」されていると思った方が良いでしょう。

 企業から個人にパワーがシフトしていると言えます。情報をもはや隠すことが不可能ならば、逆に、積極的に情報開示を進めていくことで、候補者に主体的な意思決定を促すことも良いのかもしれません。