そこで、賠償を取らない論理として、戦争で悪かったのは首謀者であり、大半の日本国民はもちろん、中国に渡った将校や兵士は被害者であり犠牲者だったと説明したのです。しがたって、恨むべきは侵略を進めた首謀者だけだ、と。

 そしてこの指導者というのは、A級戦犯とほぼ重なる。そこで、このA級戦犯が悪く、責任を負わせると中国人民に説明したのです。今生きている日本人を恨まず、賠償も求めない、と。こういう論理で周恩来は人民に説明したのです。

 しかし、1978年に靖国神社にA級戦犯が合祀されました。それ以来、天皇陛下もそれ以降、参拝していません。そのなかで、日本の現役首相が参拝するというのは、中国が国家賠償を放棄した論理が崩れてしまうのです。

 中国としては、日本の首相と官房長官、外務大臣の政権三役が参拝したら、政治問題化するというスタンスです。日本のこれまでの歴代首相は、裏で非公式に靖国参拝をしないという趣旨の意思表示をしてきました。今は、安倍首相がいつ参拝するのか分からない状況です。中国が求めているのは、参拝しないという非公式な意思表示です。

 今、中国では猛烈な権力闘争をしています。胡耀邦氏が日本に対して弱腰だ、親日過ぎるということで失脚につながった歴史があるように、対日姿勢は非常に重要なのです。

変化しつつある対日感情
両国が再確認すべきこと

――日中両国に問題があるように思います。関係改善へ向けて中国が取り組むべきことをお教えください。

 中国では解放されていなかった時代の、日本に対するイメージが今でもそのまま保たれています。いかに日本が残虐だったかということを前面に出した教育がされてきて、それが反日を煽っていたという背景があります。

 しかし、最近は徐々に日本に対する意識が変わってきています。2005年の反日デモに参加した人たちは、主にホワイトカラーと大学生だった。しかし、2012年の反日デモの際は、ホワイトカラーと大学生はほとんど参加していません。90%以上が地方からの出稼ぎ労働者でした。