一見すると関係のない制度が
自分の暮らしに直結している

 今回の制度改正は、補償範囲や掛金水準の適正化が主目的だったため、健康保険の加入者個人が行う届出や出産育児一時金の給付額に変更はない。

 だが、在胎週数が短くなり、出生体重も低くなったことで、補償対象範囲は広がり、万一の分娩事故で子どもに重度の脳性麻痺が起きたときには利用できる人が増える可能性もある。

 補償額は、20年間で合計3000万円(一時金600万円、分割金120万円×20回)。申請は、子どもの出生から5年以内なので、万一事故にあった場合のために覚えておきたい制度だ。

 今回の産科医療補償制度の見直しは、結果的に個人がもらえるお金に変更はないので、ほとんどの人は気に留めないことだろう。

 だが、この制度ができなければ、さらに産科医が不足し、今頃は安心して出産できる分娩施設はもっともっと減ってしまっていたかもしれない。そうなれば、分娩事故で子どもが重度の脳性麻痺を患った人だけではなく、これから子どもを持ちたいと思っている人すべてが問題の当事者となっていただろう。

 分娩施設減少の流れに歯止めをかけ、一定の評価を得ているからこそ、どうしたら持続可能な制度に生まれ変わらせることができるのかを、健康保険組合や医療者、運営機関の関係者たちが話し合いを続け、厳しい保険財政のなかでも、今回、一応の決着をみたのだと思う。

 一見、自分には関係ないと思える制度が、実は自分たちの暮らしを守っていたことに、後から気づくことはよくある。だが、社会保障制度は、無くなってしまってから気がついても遅いのだ。だからそこ、持続可能性を意識しながら、制度の行方をおっていきたい。