大河ドラマ『風林火山』で彗星の如く現れた
期待の本格派女優が語る“役者愛”
しばもと・ゆき 1983年10月18日生まれ、東京都出身。07年のNHK大河ドラマ『風林火山』のヒロイン・由布姫役で鮮烈なデビュー。その後も、映画『私は貝になりたい』や『真夏の夜の夢』などに出演。来年1月には『BANDAGE』が公開予定。 |
黒澤明監督の名作『羅生門』。その原作としても知られる、芥川龍之介の小説「藪の中」の登場人物の1人、多襄丸を主人公にした映画がアクション時代劇『TAJOMARU』だ。この中で、小栗旬演じる主人公・畠山直光(後に多襄丸)の許嫁であり、裏切りと愛憎がうごめく中、波瀾万丈の人生を歩むことになる阿古姫に扮しているのが柴本幸。
NHK大河ドラマ『風林火山』の由布姫役で彗星の如く現れた柴本。本作では『羅生門』同様、二転三転するストーリーの中で、愛や運命に翻弄されながらも強く生きる阿古姫を見事に演じて見せた。
「お芝居が好きで好きでたまらなくて女優になった」と語り、「まだまだ成長中」と繰り返す柴本に、映画のこと、女優について、そして芝居にかける情熱について語ってもらった。
阿古姫のすごいところは
愛する人のために心を鬼にできること
──最初に脚本を読んだとき、ご自身が演じた阿古姫という役を、どんな風に演じようと思いましたか?
柴本:あまりにも二転三転していく役なので、どんな風に演じようと考えると余計に混乱しそうで。だから、軸には小栗旬さん演じる直光への愛情があって、そこからすべてが派生していると考えて演じました。
──では、監督からはどんな風に演じて欲しいと?
柴本:中野監督は、最初に決め込んで作る方ではないんですね。1つひとつのシーンを画(え)として捉えるビジョンを持っていて、このカットが最初にきて、次にこのアップという風に、撮りながら当てはめていく。内面的なことももちろん仰いますし、大事にされますが、どういう風に見えるかも大事にしているんだと思います。最初はちょっと戸惑いましたが、それにどう対応していこうかと、試行錯誤しながら演じていました。
──柴本さんなりの役作りの方法があれば、教えていただけますか?
柴本:私、役作りという言葉が、未だにピンとこないんです。どちらかっていうと、エネルギーの向かうままに突き進むところがあって。でも今回、完成作を見て、ただエネルギーを傾けるだけではなく、俯瞰でものを見られるようにしなくちゃと思いました。もちろん役者として、1人のキャラクターを生きたいという思いは、すごく強くありますが、それだけじゃない。私の演技が映像としてどう見られるかを、もっと俯瞰できるようにしていきたいですね。