11月18日、安倍首相は消費再増税の延期を表明、21日にはアベノミクスの「信」を国民に問うとして、衆議院を解散した。衆議院総選挙の結果がどうあれ、再増税延期に反対している政党がないため、来年10月に予定されていた8%から10%への消費税率の再引き上げは、18ヵ月間延期され2017年4月からとなる見込みだ。

 だが、消費税率引き上げ先送りは、日本の将来を大きく左右するかもしれないという意味で極めて大きな決断だ。そこでDOLでは、この決断が日本の将来にどのような意味と影響を持つのかについて、専門家にご登場いただき議論を進めていく。第1回は消費増税延期を巡る論点を整理する。

「経済再生が先」か、
「財政再建が先」か?

 第一の論点は「経済再生が先」か、「財政再建が先」かである。アベノミクスは周知のように(1)大胆な金融緩和政策、(2)機動的な財政政策、(3)成長戦略の3本の矢から成り立っている。

 中でもその柱となっているのが、(1)によるデフレ脱却。黒田日銀が昨年4月に「量的・質的金融緩和政策」を開始した。その狙いはこうだ。

 日銀が金融機関から大量に国債を購入して市中におカネを供給することによって、予想インフレ率が上昇→実際のインフレ率も上昇→企業の売上・利益の増加→賃金の上昇→消費支出の増加・設備投資の増加→企業の売上・利益の増加という経済好循環である。しかし、4月からの消費税率の5%→8%の引き上げで、景気は大きな落ち込みを示した。このため黒田日銀は10月末に追加緩和を実施し、デフレ脱却へ向け再度バズーカ砲をぶっ放すことになった。

 増税先送り派の主張は、日銀がアクセルを踏んでいるのに、ブレーキをかけると車がまたスピンする。消費需要が落ち込んだままでは予想インフレ率が下がり、景気が後退して、デフレに逆戻りする危険がある。そうなれば消費税率を引き上げて、消費税収だけが増えても、税収全体ではマイナスとなり、かえって財政再建が遠のく、というものだ。