毎年、11月最後の木曜日に定められている感謝祭が終わると、アメリカではクリスマスシーズンの到来となる。宗教的な意味で、クリスマスやユダヤ教の祝日ハヌカを指折り待ちわびる人々もいるだろうが、残り多くの大衆にとってクリスマスシーズンとは、1年のなかで最大のショッピングシーズンである。
感謝祭翌日の金曜日、通称「ブラックフライデー」は、来客を見込んで全米の店舗でディスカウントセールが行われる(今年は11月28日)。元来、この日1日のビジネスだけで商売を黒字(ブラック)に押し上げるほどの大きな売上があるためにこの名前が付けられたのだが、ここ数年はその様子が変わってきたという。
全米小売業協会(NRF)などが4630人以上を対象に行った調査によると、2014年のブラックフライデーを含む感謝祭の週末に消費者がショッピングに費やした総額は509億ドルと、昨年の574億ドルから11%の減少を見せたという。1人当たりの消費額も、昨年の407ドル余りから6.4%減って、およそ381ドルになった。
店頭やオンラインで行われる最大のショッピングデーは依然としてこの週末。昨年の58.7%から今年は55.1%に減っているが、クリスマスシーズンのショッピングをこの週末に行うと答えた人々はまだ過半数を超えている。それでも、ブラックフライデーは昔ほどにはくっきりしたショッピングデーとしての特徴を失っているのだ。
際限なき「前倒し」で
霧散するクリスマスショッピング
NRFがその理由として挙げているのは、3つだ。
1つは、さまざまなオンラインショップや路面店が競合の向こうを張ろうとして、セール期間を前倒しにしていること。数年前ならば、ブラックフライデーは文字通り感謝祭翌日の金曜日の朝に始まったものだった。だが、1、2年前から感謝祭の夕方にディスカウントセールを始めるショップが散見されるようになって、世間の批判を浴びた。収穫に感謝するアメリカ特有の、そして最大の国民の祝日を台無しにしているからだ。
だが、もう今年はそんな批判も聞かれなくなった。今やセールは感謝祭の前から始まるようになっているのだ。もはや足並みを揃えようというショップは一握りしかいなくなり、それよりも競合に先駆けて消費者に財布を開かせようという店が増えている。