ヘブン(トミー・バストウ)は「月収100円」、当時の物価で帝国ホテルに何泊できた?〈ばけばけ第22回〉『ばけばけ』第22回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第22回(2025年10月28日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)

「文明開化の音がようやく聞こえてきたわ〜」

 レフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)が上陸。異文化によるディスコミュニケーションがコント仕立てのようになっていて面白い。

 松江に県知事(佐野史郎)が呼び寄せた異人が来ると聞いて、トキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)とサワ(円井わん)が港に見に行く。

 来た!

 花吹雪が舞って、松江の人々はヘブンを大歓迎。

「歩いちょる 歩いちょる」とトキとサワも大注目。

「文明開化の音がようやく聞こえてきたわ〜」とサワのテンションが上がっている。彼女は以前からわりとクールで、世をはかなんでいるイメージがあるが、「凄い、なんかシカゴみたい、ようわからんけど」というセリフに注目してみる。なんだかわからない言葉が口をついてしまうほど気持ちが高揚しているということなのはわかる。

 明治時代にはまだ、米倉涼子も主演したブロードウェイミュージカル『シカゴ』も、ロックバンド「シカゴ」も存在していないはずだが、単なるシカゴという街の固有名詞? オーパーツ? でもトキは「わかるわかる」と一緒に盛り上がる。

 時代設定は明治23年(1890年)。数年後、1893年にはシカゴで万博が開催されるので、日本でもシカゴが認識されてはいるだろう。ネットを検索してみると、松江出身の彫刻家・荒川亀斎がシカゴ万博に「稲田姫像」(出雲大社蔵)を出展、優等賞を獲得した、という記述に出合った。

 しかも小泉八雲記念館のページには、シカゴ万博への出品は八雲が亀斎に勧めたものだとも書かれている。言わずもがな、八雲はヘブンのモデルとなった人物だ。

 ほかにも、たなべの杜という不動産会社では、「田部家の玉鋼」は「かつての操業で生産された大量の鉄は、全国の鉄の需要を満たし、日本の近代化の一翼を担っていました。明治時代には玉鋼をシカゴ万博とパリ万博に出展」という記述も発見。

 いずれにしても数年後、シカゴと松江は関わり合うようだ。サワは教師を目指しているだけあって、世界情勢にも目を向けているに違いない(考えすぎ?)。