安倍首相は消費増税先送りを表明した際の記者会見で「税制こそ議会制民主主義と言ってもよい」と語ったが、総選挙では税制のあり方が、全く問われていない。「代表なくして課税なし」と言うのであれば、選挙で本来問われるべきは、一国の税制のあり方である。
総選挙の争点は的外れ
今回の選挙の争点は、「アベノミクスを問う」ということのようだ。安倍政権は、デフレ経済からの脱却を目指して、異次元の金融緩和と公共事業追加という機動的な財政政策を、第1の矢、第2の矢と称して実行してきたが、今後第3の矢も含めてその実績・効果の是非が問われる。
アベノミクスがデフレ脱却の道を進めながらも、一方で副作用とリスクをばらまいており、それへの対応を急ぐべきだと、前回指摘したので、ここでの繰り返しは避けたい。
しかし、それだけが争点というのでは実は画竜点睛を欠いている。
野党側に、アベノミクスに代わる優れた経済政策としての代案があるわけではない。仮にあるとしても、それを実行できる能力があるとは国民は考えていない。民主党政権時代の政策運営の機能不全は、いまだ大きく国民の脳裏にこびりついている。
では、本来問われるべき争点とは何か。私は、一国の税制の在り方だと考える。米国でも欧州でも、選挙で国民に問われるのは、税制の在り方である。
必要な国家規模の税制議論
税制の在り方といった場合、二つの視点がある。
一つは、国の在り方、つまり国家の規模をどうするかという論点である。
●これだけの財政赤字の下で社会保障を維持していくには、これだけの財源が必要だが、どう考えるか。
●その財源は、どの世代のどのような層に負担をお願いしていくのか。
●国家の規模は大きくしたくないというのなら、具体的にどのような歳出削減を行うのか。公務員の給与を引き下げるというような安易な提言では意味がない。