経営者として
大切なことは
人間としての迫力

編集部 本書の中では、杉本さんが経営者として自分を高めるためにやったことがいろいろと書かれていますが、田中さんは何か心掛けてきたことがありますか?

田中 そうですね、この10年間が3つくらいのレイヤーに分かれる気がします。まず会社を立ち上げてからの3年ちょっとは、杉本さんたち同世代の経営者と情報交換しながら会社を経営するっていうことの基礎を学んだ時期ですね。その後の3年ほどは、三木谷さんや藤田さんなど、ネット業界の第一線で活躍する経営者の方々にいろんなことを教えていただきました。駆け出しの頃から話す機会はありましたけど、自分も上場して時価総額が1000億を超えるという会社の経営者になったからこそ、心に響く話があるんです。

杉本 なるほど。たしかに、物事の見方が変わりますからね。

田中 そして、最近の3年くらいは、業界の枠を超えた人脈を広げるようになった気がします。今の自分だからこそ、話してくれることがあるんですよね。たとえば、一流の料理人にどうやってメニューを考えているのか質問すると、今の僕ならわかってくれるだろうという信頼感の中で語ってくれる話がある。抽象的な話であることも多いけど、抽象的だからこそジャンルを超えて大切な真理を汲み取れることがあるんです。いろんな人がいろんなことを教えてくれるようになったのは、今までがんばってきてよかったなと思える点ですね。

杉本 ある先輩に「経営者になったら会社と別に個人のキャッシュで100億もちなさい、100億もたずに経営者として発言なんてしちゃいけない」と教えられたことがあります。最初はとんでもないことを言う人だと感じましたけど、経営者としての経験を積み重ねるほどに、なるほどと思えるようになってきた。残念ながら僕はまだその域に達することができていないですけど、それくらいの余裕があって初めて目先の利益ではなく、事業を通して社会貢献することを、ちゃんと考えられるようになるんですよね。ちなみに、田中さんの次の目標ってなんですか?

田中 うちの会社のコーポレートメッセージでは「インターネットを通じて、世界をより良くする。」という言葉を掲げています。我ながら壮大おこがましいなと思うところもあるんですけど、自分たちが「いい」と思ったことに精力を傾けて、たくさんの人が感動してくれたり楽しんでくれたり、ささやかながら世の中がよくなったという手応えを感じて行けたらいいなと思っています。大切なのは経営者として、人間としての迫力じゃないかなと思いますよ。

杉本 おっしゃる通り。お互いに、ますます頑張りましょう!